日本大百科全書(ニッポニカ) 「アガード石」の意味・わかりやすい解説
アガード石
あがーどせき
agardite-(Y)
銅(Cu)の含水ヒ酸塩鉱物の一つ。希土類元素を主成分とする唯一の銅の二次鉱物。希土類元素のなかで、イットリウム(Y)にもっとも富むものをさすが、ランタン(La)あるいはネオジム(Nd)にもっとも富むものも発見されたため、区別する必要があるときはイットリウムアガード石という名称も用いられる。同系の鉱物としては、1880年に記載されたミクサ石mixite(化学式BiCu2+6[(OH)2|AsO4]3・3H2O)があり、そのY置換体に相当する。1978年に発見されたガウデイ石goudeyite((Al,Y)Cu6[(OH)2|AsO4]3・3H2O)はそのアルミニウム置換体にあたるが、比較的結合半径の大きいY族希土と半径の小さいアルミニウムが置換体関係を構成するほとんど唯一の例である。自形は六角細柱状。これが放射状集合をなすこともある。
日本では広島県尾道(おのみち)市生口(いくち)島瀬戸田(せとだ)鉱山(閉山)付近の採掘跡から産し、アントラー鉱、斜開銅鉱、スコロド石、赤銅鉱などとともに産する。その後、奈良県三盛(さんせい)鉱山(閉山)、同竜神(りゅうじん)鉱山(閉山)などからも発見されている。同定は他の銅の二次鉱物と識別しがたいが、非常に目だつ鮮緑色を呈する。フランス人地質学者ジュール・アガールJules Agard(1916―2003)にちなんで命名された。
[加藤 昭 2015年12月14日]