アサガラ(読み)あさがら

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アサガラ」の意味・わかりやすい解説

アサガラ
あさがら / 麻殻
[学] Pterostyrax corymbosus Sieb. et Zucc.

エゴノキ科(APG分類:エゴノキ科)の落葉小高木。高さ5~10メートルになる。樹皮は淡灰褐色でコルク層が発達し、縦に裂け、若枝に星状毛がまばらにつく。葉は互生し、広楕円(こうだえん)形または広倒卵形、長さ8~18センチメートルで先は短くとがり、縁には先の曲がった短い芒(のぎ)状の低い鋸歯(きょし)がある。5~6月、前年枝に2~3枚の葉を伴った長さ10センチメートル前後の円錐(えんすい)花序を下垂し、白色花が偏側性の穂状につく。花弁は5枚、ほとんど離生して半開し、倒披針(とうひしん)形、長さ1センチメートル、雄しべは10本ある。果実は10月に熟し倒卵形、長さ1センチメートル程度で5翼があり、先に花柱が残って、星状毛を密布している。本州の近畿地方以西と四国九州、および中国中部に分布する。和名は、材が軽くて軟らかく、折れやすいので、麻の茎から繊維をとったあとのオガラすなわち麻殻(あさがら)に例えたもの。辺材は幅が広くて白く、器具材、マッチ軸木などにする。アサガラ属は東アジアに4種あり、オオバアサガラは本州の宮城・山形県以西と四国、九州および中国中部に分布し、アサガラに比べ、若枝はほとんど無毛、葉と花序が大きく、果実は狭倒卵形で10稜(りょう)があり、淡黄褐色の長毛を密生する。

小林義雄 2021年4月16日]

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改訂新版 世界大百科事典 「アサガラ」の意味・わかりやすい解説

アサガラ
Pterostyrax corymbosa Sieb.et Zucc.

日当りの良い谷間に生えるエゴノキ科の落葉高木で,材は柔らかく折れやすいので,皮をとったアサの茎,すなわち麻殻にたとえられる。高さ15mに達する。葉は互生し,広楕円形で先端が急にとがり,長さ6~14cm,縁に先が腺となる低い鋸歯があり,質はやや厚い。5~6月ごろ,前年枝の側芽から2~3枚の葉をつけた円錐花序を下垂する。花は白く,長さ約1cm,横断面が五角形の萼筒の先に,5裂した花冠と10本のおしべがある。10月に5本の稜のある倒卵形の核果を結ぶ。本州近畿以西,四国,九州と中国大陸中部の暖帯上部に分布する。辺材が白くて幅が広く,器具材やマッチの軸木として用いられる。オオバアサガラP.hispidus Sieb.et Zucc.は宮城・山形県以南の温帯山地に分布し,アサガラより葉は大きいが花は小さく,果実には10本の稜があり長い毛を密生する。
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百科事典マイペディア 「アサガラ」の意味・わかりやすい解説

アサガラ(麻殻)【アサガラ】

エゴノキ科の落葉高木。近畿以西の山地の谷間に生える。高さ15mに達し,葉は互生し長さ約6〜14cm。初夏,前年枝に長さ約1cmの白色花を円錐状に下垂する。辺材は白く,器具やマッチの軸木にされる。東北南部以南に生える近縁のオオバアサガラは,街路樹にされることがある。

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