改訂新版 世界大百科事典 「アシュート」の意味・わかりやすい解説
アシュート
Asyut
エジプト中東部,アシュート州の州都で,中部エジプト最大の都市。アラビア語ではアスユートAsyūṭ。人口34万3498(1996)。ナイル川西岸に位置し,交通至便の地であるため,古代から政治・経済上重要な役割を果たしてきた。中王国時代には付近に大きな影響を与えるほど繁栄していた。ギリシア時代はリュコポリス(山犬の都市)とよばれ,コプト教徒が多く住んでいた。その後イスラム時代になると中継交易地として一段と発展した。マムルーク朝の歴史家カルカシャンディーによると,モスクや学校,市場などがあり,にぎわっていた。19世紀半ばまで大きな奴隷市場があったが,近代になるとカイロ大学やアズハル大学の分校が建てられ,教育の中心ともなった。1902年に堰堤が完成したので両岸の往来が盛んになり,東岸にも町が拡大した。イブラヒミヤ運河によってナイル川の水が利用されている。象牙,陶器,革細工,綿織物などを特産する。
執筆者:吉村 作治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報