アスエラ(読み)あすえら(英語表記)Mariano Azuela

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アスエラ」の意味・わかりやすい解説

アスエラ
あすえら
Mariano Azuela
(1873―1952)

メキシコの小説家。グアダラハラ大学医学部在籍中から創作活動を始めるが、『毒草』(1909)などの初期の作品にはフランス自然主義の影響がみられる。1910年に革命勃発(ぼっぱつ)すると革命軍側を支持し、やがて軍医として従軍するが、自軍の敗北により渡米。1915年、エル・パソで『虐げられし人々』(1916)を『パソ』誌に連載。革命に参加した人々の姿と、彼らの挫折(ざせつ)感を簡潔な文章で赤裸々に描いたこの小説は、『ボスたち』(1917)、『蠅(はえ)』(1918)とともにメキシコ革命小説というジャンルを確立する。1917年にメキシコ・シティに移り、無料診療所で働きながら、貧民街ありさまを『不運』(1923)、『蛍』(1932)などに描き、晩年は大学で教鞭(きょうべん)をとった。

[安藤哲行]

『高見英一訳『虐げられし人々』(『全集・現代世界文学の発見9』所収・1970・学芸書林)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アスエラ」の意味・わかりやすい解説

アスエラ
Azuela, Mariano

[生]1873.1.1. ハリスコ,ラゴスデモレノ
[没]1952.3.1. メキシコシティー
メキシコの作家医者を志し,勉学過程で,社会不正に抗議すべくペンをとる。メキシコ革命が始ると同時にそれに参加したが,その理想と現実との矛盾を目の前にして,ペシミスティックな人間観をいだくにいたった。革命の渦中に巻込まれた農民兵の悲惨な末路を描いた代表作『虐げられた人々』 Los de abajo (1916) は,1920年代以降のメキシコ革命文学の先駆的な作品。

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