日本大百科全書(ニッポニカ) 「アセタケ」の意味・わかりやすい解説
アセタケ
あせたけ / 汗茸
担子菌類、マツタケ目フウセンタケ科の毒キノコ。傘は円錐(えんすい)形で径3~5センチメートル、表面は茶褐色、表皮は繊維質で放射状に裂け目を現す。ひだは初め白っぽいが、しだいに泥褐色になり、茎は細めの円柱状で縦に裂ける。1907年(明治40)ごろ東京・小石川植物園で中毒があり、激しい発汗症状をおこしたため医薬学界から注目された。そのときアセタケの名が与えられ、ヨーロッパのInocybe rimosa (Fr.) Quél.の学名が採用されたが、この同定はのちに誤りであることがわかった。しかしその後同じような中毒例がなく、現在アセタケの正体は不明となっている。アセタケ属Inocybeには日本だけでも50種近くが記録されており、いずれも前述したアセタケに外形が似ているので、アセタケの仲間として見分けることはむずかしくない。この属のキノコには、ベニテングタケの毒成分として名高いムスカリンというアルカロイドを多量に含む種が多いので、すべて毒キノコとみなすのが安全である。しかし一般には食欲をそそるような形状をしていないので、中毒例はまれである。
[今関六也]