毒キノコのアセタケに多量に含まれるアルカロイドで、テングタケやベニテングタケにも少量含まれる。副交感神経支配のアセチルコリン受容体(レセプター)に作用して副交感神経が興奮したときと同じ作用(ムスカリン作用といい、心臓機能抑制、血管拡張、唾液(だえき)分泌、流涙、気管支収縮、胃腸刺激などをおこす)をする。実験薬理学的に用いられるが、臨床的には使われていない。なお、ムスカリン作用はアトロピンのような副交感神経抑制薬によって作用が打ち消される。
[幸保文治]
『大江慶治・早川滉編『胃酸分泌機構と壁細胞受容体拮抗剤』(1986・東洋書店)』▽『小川紀雄編著『新 脳のレセプター』(1989・世界保健通信社)』▽『山下衛・古川久彦著『きのこ中毒』(1993・共立出版)』
ベニテングタケ,テングタケなどの有毒キノコに含まれるアルカロイド。副交感神経に作用して唾液分泌,流涙,発汗,吐き気,嘔吐,下痢,脈拍数減少,循環虚脱などの中毒症状を現し,さらには痙攣(けいれん)や昏睡から死にいたらしめる。解毒剤としては硫酸アトロピンが有効。ムスカリン中毒の症状が,迷走神経を刺激したときの効果と非常によく似ているところから,迷走神経はその終末からムスカリン類似物質を放出して,支配する効果器に興奮を伝達しているのではないかとの仮説が出されたこともあるが,その後,伝達物質の本体はアセチルコリンであることが明確になった。このような経緯を反映して,現在でも副交感神経の支配を受けている器官に存在するアセチルコリンが働きかける場所(アセチルコリン受容体)を,ムスカリン様受容体muscarinic receptorと呼んで,運動神経の支配下にある筋肉細胞上や自律神経節細胞上のアセチルコリン受容体と区別している。
→アルカロイド
執筆者:粕谷 豊
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…この特異な症状のため医学界からも注目されたが,その後アセタケなるキノコによる中毒がでないため,アセタケの正体は不明のままでいる。しかしアセタケ属Inocybeにはテングタケの毒成分として名高いアルカロイド,ムスカリンmuscarineを含む種が多く,その含有量はテングタケをはるかにしのぐのでアセタケ属のキノコはすべて警戒する必要がある。アセタケ属には日本だけでも50種ほどある。…
…この特異な症状のため医学界からも注目されたが,その後アセタケなるキノコによる中毒がでないため,アセタケの正体は不明のままでいる。しかしアセタケ属Inocybeにはテングタケの毒成分として名高いアルカロイド,ムスカリンmuscarineを含む種が多く,その含有量はテングタケをはるかにしのぐのでアセタケ属のキノコはすべて警戒する必要がある。アセタケ属には日本だけでも50種ほどある。…
…レセルピンは,中枢神経にも作用してトランキライザー作用を発揮する。
[副交感神経興奮薬parasympathomimetic agent]
副交感神経終末から興奮伝達物質として放出されるアセチルコリンが結合して効果器に興奮を伝達する部位,すなわち,アセチルコリン受容体のうちでもムスカリン様受容体と呼ばれるものを興奮させて,副交感神経興奮と同様の効果を発現する薬物をいう。この種の薬物は,アセチルコリン,ムスカリン,ピロカルピン,メタコリンなどのように直接受容体に作用するものと,神経終末から放出されたアセチルコリンを分解する酵素であるコリンエステラーゼを阻害して,アセチルコリンの蓄積をもたらすもの(抗コリンエステラーゼ薬)とに大別される。…
※「ムスカリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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