日本大百科全書(ニッポニカ) 「アダックス」の意味・わかりやすい解説
アダックス
あだっくす
addax
[学] Addax nasomaculatus
哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ウシ科の動物。アフリカのリオデオロ(西サハラ)、セネガルからエジプト、スーダンまでのサハラ砂漠に分布する。肩高1.0~1.1メートル、体重80~120キログラム。角(つの)は雌雄にあり、長さは約90センチメートル、ときに1.1メートルに達する。体背面は夏は淡い砂色、冬は灰茶色で、腹面や四肢などは白い。顔は黒く、前面にX字形の白斑(はくはん)がある。ひづめは黒色で幅広く、砂地での行動を助ける。普通5~20頭の小群で生活し、年をとった雄がリーダーとなる。砂漠に生える植物を食べ、水分もそれからとるため、ほとんど水を飲まずに生きることができる。雨のあとで急速に茂る植物を求めて、長距離の移動を行うが、本種にはこれらの植物を遠くから捜し出す能力があるといわれる。冬または早春に1子を産む。体が頑丈で、長距離を歩くのに適するが、走るのは遅いため、ラクダやウマを利用する原住民に狩られ、肉は食用に、皮は靴用にされた。生息数が7000~8000頭と激減、現在では分布域にあたる国々では法律により保護している。
[今泉忠明]