日本大百科全書(ニッポニカ) 「アフリカスイギュウ」の意味・わかりやすい解説
アフリカスイギュウ
あふりかすいぎゅう
African buffalo
[学] Syncerus caffer
哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ウシ科の動物。アフリカのスーダン、エチオピアから南アフリカ共和国の東、西、北ケープ州まで分布し、水辺に近い草原に生息する。体格は大きく、頭胴長2~3メートル、尾長1メートル、肩高1.5メートル、体重700~1000キログラムに達する。角(つの)は雌雄ともにあり、基部は著しく幅広く、額面でほとんど接近し、先端になるにしたがって細くて鋭く、上内方に湾曲する。体色は黒褐色ないし黒色で、体毛は少なく、とくに老獣では極端に少なくなる。耳は大きくて垂れ下がり、縁に長毛がある。数頭から数百頭に及ぶ群れをなしてすみ、日中は草の茂みで休息し、薄暮から夜にかけて行動する。草食で、泥浴びを好む。妊娠期間は340日、1産1子である。本種の生息地、南アフリカのクルーガー国立公園とその周辺で、1993年ごろ偶蹄類の伝染病である口蹄疫(こうていえき)が発生し、危機的状況になった。このため、世界各地から健康な個体を集めて新しい群れをつくる計画が進み、日本からは群馬サファリパークが25頭を提供し、ほかの国からの75頭とともに保護区に放たれている。こうした活動は新しい国際貢献の一つといえよう。なお、本種の1亜種S. c. nanusを別種としてアカスイギュウとよぶことがある。
[中川志郎]