ヨーロッパ中世における、中等教育ないし高等教育程度の基礎的教科。七自由科ともいう。文法、修辞学、弁証法の三学trivium、および算術、幾何、天文学、音楽の四科quadriviumからなる。この種の科目は古くギリシア・ローマ時代にまでさかのぼることができ、自由人にふさわしい全面的教養(パイデイア)、自由学芸(リベラル・アーツ)として尊重されていた。その後、5世紀ごろカッシオドルス(487?―583?)らがキリスト教の理念に基づき教育内容を整えるために、従来のギリシア・ローマの学問を七つの教科として集大成し公式に定められた。三学は初歩的で言論に関し、四科はより高度で事物に関する教科である。その内容は今日の名称が意味する範囲とは異なり、また時代差もある。たとえば、文法はラテン文学の注釈、修辞学は教会の文書・法令の作成や歴史、幾何は初歩の地理学、天文学は占星術、音楽は数理的研究などを含んでいた。これらを修めると中世の最高位にあった神学を学ぶことが許された。13世紀以降の中世大学では神学、法学、医学の各専門学部への進学課程であった学芸学部の中核的な教科となった。自由七科の精神はその後も、職業人や専門家である前に優れた人間でなければならないという教育理念をはぐくみ、学校教育や大学教育に大きな影響を与えてきた。わが国の新制大学に取り入れられた一般教育課程もこのような欧米の歴史の流れをくむ。
[白石克己]
『H・ラシュドール著、横尾壮英訳『大学の起源』(1968・東洋館出版社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ヨーロッパ中世の学校教育における文法,修辞,論理(以上が下級3学),数学,音楽,幾何,天文(以上が上級4学)の7科。5世紀のマルキウス・カペラがこの名を用い,10世紀のジェルベールが形式を完成した。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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