アモルファス物質(読み)アモルファスぶっしつ(その他表記)amorphous substance

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アモルファス物質」の意味・わかりやすい解説

アモルファス物質
アモルファスぶっしつ
amorphous substance

固体物質は原子 (分子・イオン) から構成されており,原子の配列が規則的なものを結晶と呼ぶのに対し,その配列に規則性を欠き,きちんとした外形を呈さないものを,アモルファス (非晶質あるいは無定形) 物質という。アモルファスの元の意味は「外形を示さない」。この物質は,高温融体 (あるいは気体) を1秒間に 100万℃という超高速で瞬間冷却することにより,液体状態と同じばらばらな原子配列に凍結することで作製できる。その構成元素の種類により,アモルファス金属 (合金) ,アモルファス半導体と呼ばれ,アモルファスシリコンは太陽電池として実用化されている。アモルファス金属は,高速回転する金属 (銅) ロールに溶融金属を吹き付ける回転ロール法,冷媒液中に噴出させる液中紡糸法などで作られ,結晶とは異なり,物性に方向性がないので,粘り強い,硬い,腐食に強いなどの特徴がある。しかし,アメリカでは変圧器用の鉄芯 (しん) 材として用いられるのに対し,日本では優れた磁気特性 (軟磁性) を主として電子機器の磁気ヘッドなどに応用している。このため特許を持つアメリカのアライド・ケミカル社は日米政府間協議を通じてアメリカ方式での普及要求,日本側の譲歩を引き出した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アモルファス物質」の意味・わかりやすい解説

アモルファス物質
あもるふぁすぶっしつ
amorphous substance

無定形あるいは非晶質物質同義であるが、電子材料、磁性材料についてはアモルファスとよぶことが多い。通常測定では結晶として観測できないほど微細な結晶粒集合体で、構成粒子が微細なために、通常の結晶性物質ではみられない特異な物理・化学的性質を発現することがある。半導体、磁性体、金属材料などにそのような例が多くみられる。

[岩本振武]

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世界大百科事典(旧版)内のアモルファス物質の言及

【固体】より

…物質は,原子,分子が集まってできたものであるが,固体とは,液体,気体とともに物質のとる三つの集合状態の中の一つの形態である。われわれにとってもっとも身近な水についていえば,氷,水,水蒸気は同じ分子からなる固体,液体,気体の状態の呼名である。水を冷却すれば氷になる,あるいは炭酸ガスを圧力を上げて低温にすればドライアイス(固体)になるように,通常,液体または気体の状態で温度を下げたり,圧力を上げたりすると固体になる。…

※「アモルファス物質」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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