日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルス・アマトリア」の意味・わかりやすい解説
アルス・アマトリア
あるすあまとりあ
Ars Amatoria
古代ローマの詩人オウィディウスのエレゲイア調恋愛詩。3巻。西暦1年ごろに刊行された。題名は修辞学(アルス・レトリカ)、文法学(アルス・グラマティカ)などをもじったもので、恋の達人オウィディウス先生が若者たちに「恋愛学」の奥義を伝授しようという趣向。始めの2巻は男性向けで、いかにして恋人を獲得し、愛を維持すべきかを説き、あとの1巻は女性に向けて、恋の心得、魅力増進法などを教える。警抜な風刺とアイロニーが横溢(おういつ)し、当時の都の風俗の生き生きとした描写と人間心理への鋭い洞察に富んだ戯作(げさく)文学の傑作の一つとされる。
[松本克己]
『樋口勝彦訳『アルス・アマトリア』(『世界文学大系 64』所収・1965・筑摩書房)』