アルセーニエフ(読み)あるせーにえふ(英語表記)Владимир Клавдиевич Арсеньев/Vladimir Klavdievich Arsen'ev

改訂新版 世界大百科事典 「アルセーニエフ」の意味・わかりやすい解説

アルセーニエフ
Vladimir Klavdievich Arsen'ev
生没年:1872-1930

ロシア,ソ連邦極東探検家,人類学者,作家。1902年から10年まで,3回にわたってソ連邦極東地方の地理学的・人類学的調査,探検を行い,12年には《ウスリー地方の軍事・地理学的および軍事・統計学的概論》を著したが,これはこの地方に関する最初の総合的研究といわれる。さらに18年にはカムチャツカ,23年にはコマンドル諸島,27年には沿海州の調査・探検を行い,この地方に住む諸民族の生活・習俗フォークロアを研究した。作家としては《デルス・ウザーラ》(1923),《シホテ・アリン山脈にて》(1937)などにおいて,ソ連邦極東地方の自然のきびしさと美しさ,タイガに住む人々への愛情を描いた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルセーニエフ」の意味・わかりやすい解説

アルセーニエフ
あるせーにえふ
Владимир Клавдиевич Арсеньев/Vladimir Klavdievich Arsen'ev
(1872―1930)

ロシアの探検家、民俗学者、作家。サンクト・ペテルブルグに生まれたが、生涯大半を極東の探検旅行に過ごした。1902~1903年南沿海州(現、沿海地方)、1906~1910年シホテ・アリニ山脈、1918年カムチャツカ半島、1923年コマンドルスキー諸島と次々に探検地を踏破、ナーナイ人、ウデゲイ人など極東の先住民の風俗、習慣や自然に関する貴重な資料を残す。一般読者向けに執筆された『ウスリー地方探検記』(1921)、『デルス・ウザーラ』(1923)、『シホテ・アリニの山中にて』(1937)は大自然のなかに生きる人々のたくましさを叙情的に歌い上げた優れた紀行文となっている。『デルス・ウザーラ』は黒澤明監督の手で映画化(1975)されたことでも知られる。

[浦 雅春 2018年11月19日]

『長谷川四郎訳『デルスウ・ウザーラ』(平凡社・東洋文庫/改題『デルスー・ウザーラ』上下・河出文庫)』

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百科事典マイペディア 「アルセーニエフ」の意味・わかりやすい解説

アルセーニエフ

ロシアの探検家,人類学者,作家。1902年以降極東を調査,地理・民俗を研究。著書《ウスリー地方の軍事・地理学的および軍事・統計学的概論》(1912年)は,この地方に関する最初の総合的研究といわれる。ソ連極東地方の厳しい自然と共生する少数民族ゴリド族の猟師,デルス(デルスウ)との心温まる交流を描いた探検紀行《デルス・ウザーラ》(1923年)は,1975年黒澤明監督によって映画化された。
→関連項目沿海州長谷川四郎

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