低温,乾燥,過湿のように環境条件が樹木の生育に不適な方向で地域的に変化し,高木が森林として一様に生育できなくなる限界線。限界線は相観により判断されるが,環境が急激に変化するところでは明確であるのに対し,環境変化がゆるやかだと移行は連続的である。環境傾度にそって,森林限界から高木限界,低木限界へと移り変わる移行帯がみられることが多い。
森林限界は,高緯度地方では亜寒帯(針葉樹林帯)と寒帯(ツンドラ帯)の境に生じ,北半球では北緯60°~70°付近になるが,大陸西岸では海洋性気候のため北上する。高山では亜高山帯と高山帯の境に生じ,北海道では1000m付近,中部地方では2500m付近と,低緯度ほど高くなる。同じ北海道でも山により異なり,中央山地の大雪山では1300~1400mと高く,独立峰の羊蹄山では1100mになり,さらに1000m以下の低い山でも山頂部周辺には高木林がなくなり,森林限界が生じる。これは,大きな山塊では独立峰に比べて気候が大陸的になり,気温の年較差が大きく,夏の生育期間が高温になる(地塊隆起度の現象)ためであり,また,山が低くても山頂付近は強風や多雪の影響が強くあらわれる(山頂現象)ためである。一つの山でも,湿潤な谷部の方が尾根部より上昇する傾向や,日射量の多い南斜面が暖かいため北斜面より高くなるとか,逆に乾燥が強くなり低くなるとかの現象が知られている。熱帯高山や南半球高緯度では,冬の寒さが弱いためか,常緑広葉樹林が森林限界まで続く現象が普通にみられる点で,北半球とは異なっている。
執筆者:藤田 昇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
高木林の分布する限界線をいう。極地、高山においては低温によって森林限界ができ、熱帯では乾燥地帯に向かって森林限界ができる。森林限界は、ほかに崩壊、強風、雪崩(なだれ)、洪水、硫気孔、海岸などの局地的、土地的な条件によっても形成される。一般に湿潤気候下では森林限界は明瞭(めいりょう)な線として認識できるが、乾燥気候下では森林から開放的植生域への移行は漸変的である。日本の山岳における森林限界は、針葉高木林(シラビソ、トウヒなど)と針葉低木林(ハイマツ)との間に森林限界があると考えるのが一般的で、本州中部でのその境界は2500メートル付近となる。しかし、高木林あるいは森林の定義によっては、ミヤマナラや丈の高いハイマツ群落は森林限界内のものとも考えられる。
[大場達之]
…環境が変化して樹木が生育できなくなる限界線では,急激な移行のみられる場合もあるが,幅のある移行帯を生じることが多い。まず高木が生育できる微環境が全体的ではなくなり,不均一で限られるようになり,森林が成立しなくなる(森林限界)。ついで高木の生育できる微環境がなくなって,低木と疎生した直立状の高木が存在する地帯から,高木限界を経て,矮性(わいせい)状の低木のみが生育する地帯となる。…
※「森林限界」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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