夏の融雪期にとけきらずに残る越年性の氷雪の広がりを指す。山地では雪渓や雪田をつくるので,現在では〈越年性(多年性)雪渓〉と呼ばれることが多い。実際には1年でできるのに,それを“万年”雪と呼ぶのは適切でないからである。降りたての雪(新雪)の密度は0.05~0.15g/cm3くらいであるが,万年雪をつくる雪は,気温の高い昼間にとけ,気温の下がる夜間に再び凍結することを繰り返すうちに氷化し,密度が増大して0.5~0.6g/cm3くらいになる。こうした雪は,雪の結晶と結晶の間にある空隙がつながっていて完全な氷になっておらず,雪と氷の中間的な性質をもっている。これをフィルンfirnまたはネベnévéという。以前はフィルンのことを万年雪と呼んだこともあるが,現在ではフィルンを積雪の物理的性質を表す名称とし,万年雪はフィルンからなる越年性雪渓を指すというふうに両者を区別して用いるのがよいとされている。万年雪の下限,すなわち年間の雪の堆積量と融解などによる消耗量とが等しい点を連ねた線を雪線snow lineという。その高度は降雪量,気温などの気候因子に支配されるので気候的雪線とも呼ばれ,一般に高緯度地方ほど雪線高度は低くなる。一方,なだれのデブリや吹き溜った雪が残ってできる雪渓も万年雪と呼ばれ,その下限は地形に支配されるので地形的雪線と呼ばれる。単に雪線という場合は気候的雪線を指す。
執筆者:小野 有五+若浜 五郎
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