アルベーン(読み)あるべーん(その他表記)Hannes Olof Gösta Alfvén

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルベーン」の意味・わかりやすい解説

アルベーン
あるべーん
Hannes Olof Gösta Alfvén
(1908―1995)

スウェーデン物理学者ウプサラ大学学位を得たのち、1937年からはノーベル物理学研究所に所属し、1940年に王立工科大学の教授となった。オーロラの研究のなかで、磁場をもった宇宙プラズマの概念を導入し、電磁流体力学磁気流体力学)の基礎的な研究を行った。とくに、磁場中のプラズマに生ずる横波アルベーン波)の発見(1942)は有名である。また、電磁流体力学を太陽系起源や進化など広く天体の問題に適用した。さらに1966年には小説を執筆、ペンネームで出版しヨーロッパ各国で翻訳され話題となった。「電磁流体力学における基礎的研究と発見、およびプラズマ物理学への応用」により、1970年にノーベル物理学賞を受賞した。なお、反強磁性と強磁性について基礎的研究を行ったフランスの物理学者ネールとの同時受賞であった。

[山崎正勝]

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改訂新版 世界大百科事典 「アルベーン」の意味・わかりやすい解説

アルベーン
Hannes Olof Gösta Alfvén
生没年:1908-95

スウェーデンのプラズマ物理学者。1970年ノーベル物理学賞受賞者。ウプサラ大学に学ぶ。プラズマと磁場との相互作用宇宙空間や天体では重要な働きをすることに注目して,宇宙電磁流体力学を確立した。とくにプラズマと磁場の相互作用によって生ずるアルベーン波の発見や,プラズマの磁場への〈凍結現象の発見は,この分野発展に大きな影響を与えた。彼の成果を応用できる核融合プラズマの研究にも幾多の貢献をするかたわら,原子力発電に対しては批判的な態度をとり続けてきた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルベーン」の意味・わかりやすい解説

アルベーン
Alfvén, Hannes Olof Gösta

[生]1908.5.30. ノルチェピング
[没]1995.4.2. ジュールスホルム
スウェーデンの天文物理学者。ウプサラ大学に学び,ストックホルムの王立工科大学研究員を経て教授。 1967年からカリフォルニア大学の教授を兼任。オーロラの神秘から,太陽系,宇宙の生成に興味をもった。太陽黒点生成の理論に関連して,電気伝導性流体が強磁場中を動くときに発生する波動 (アルベーン波 ) を解明。電磁流体力学プラズマ物理学の基礎を開いた。彼の研究は核融合の開発に欠くことのできないものと考えられている。 70年 L.ネールとともにノーベル物理学賞を受賞した。

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百科事典マイペディア 「アルベーン」の意味・わかりやすい解説

アルベーン

スウェーデンの物理学者。ウプサラ大学卒。1963年ストックホルムの王立工科大学教授,米国カリフォルニア大学教授を兼任。電磁流体力学の先駆者で,宇宙,地球磁場内でのプラズマ現象を究明,太陽黒点の成因,太陽系の起源,磁気嵐などについての論文が多い。1970年にノーベル物理学賞。
→関連項目電磁流体波

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世界大百科事典(旧版)内のアルベーンの言及

【電磁流体力学】より

…このときは磁場と液体の結合が大きく,磁場は流体に凍りついたようにこれとともに運動するとみなすことができる。このとき流体の密度をρとすると,磁束密度Bの磁場に沿って,の速度で伝搬する横波(アルフェン波)の存在しうることがスウェーデンのアルフェンHannes Alfvénによって指摘され(1942),多くの実験によって確認されている。流体が圧縮性をもつときは音波との干渉が生じ,純アルフェン波のほかに磁場と伝搬方向のなす角によって伝搬速度の異なる異方性の2種の磁気音波の存在することが知られている。…

※「アルベーン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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