日本大百科全書(ニッポニカ) 「アーティチョーク」の意味・わかりやすい解説
アーティチョーク
あーてぃちょーく
artichoke
[学] Cynara scolymus L.
キク科(APG分類:キク科)の多年草。和名チョウセンアザミ(朝鮮薊)は、異国から渡来したアザミに似た植物というほどの意味であろう。地中海沿岸原産で、もとは食用として栽培されてきたが、近年切り花としての需要も多い。南ヨーロッパの野生アザミが改良されたカルドンをさらに改良してアーティチョークが生じたといわれる。現在はフランスで栽培が盛んである。
外形はアザミに似て大形、高さ2~3メートルになる。葉は互生して大きく、羽状に深く裂け、裂片の先は刺(とげ)状になる。裏面には白い綿状の毛が密生する。初夏に直径15センチメートルほどの紫色の頭状花をつける。総包葉片は肉質で卵状長楕円(ちょうだえん)形、刺はない。種子は細長く、長さ6~7ミリメートル、灰色で角張る。根はゴボウ状に発達する。
[星川清親 2022年1月21日]
栽培
繁殖は株分けまたは実生(みしょう)による。日当り、水はけのよい土地を好む。晩秋や早春に株分け、仮植えした苗を初夏に定植する。あるいは早春に温床で播種(はしゅ)して苗を育て、初夏に定植する。翌年、初夏に出るつぼみを、花弁が開く直前に収穫する。
[星川清親 2022年1月21日]
料理
古代ギリシア・ローマ時代から野菜として利用されたが、栽培の記録では15世紀のイタリアのものがもっとも古い。日本へは江戸時代に初めて渡来したが普及しなかった。また、第二次世界大戦後も進駐軍用にかなり栽培されたが、一般には普及しなかった。アーティチョークは西欧人が好む野菜で、彼らの食事にもっともポピュラーなものといえる。西欧の食生活をなんでも受け入れた日本人が、文明開化以来100年以上これを受け付けないのは不思議なことである。房総半島や三浦半島、長野県、徳島県、九州などでつくられているが、生産量は少ない。アメリカやフランスなどから輸入している。
開花直前の花蕾(からい)を、姿のまま、レモン汁と塩を加えた湯で下ゆでし、総包葉片をはがしながら、各種のソースをつけて、根元の肉厚の部分を歯でしごいて食べ、花托(かたく)(ボトムとよぶ)も切りながら食べる。また、裏漉(うらご)ししてムースやスープの材料にする。グラタン、フライ、サラダなどにも使う。下ごしらえのときには、変色を防ぐため、切り口をレモンでこする。フランスでは生食もする。
[星川清親 2022年1月21日]