全形は大型のアザミに似た地中海域原産のキク科の多年草。和名はチョウセンアザミ。原種は判然としないが西地中海域原産で,葉柄を食用にしたカルドンC.cardunculus L.(英名cardoon)をさらに改良したものと思われている。また,東地中海域からトルコに分布するC.syriaca Boiss.と交配すると,完全に稔性のある種子と雑種後代を生じる。15世紀にはすでにイタリアで栽培され,16世紀以降フランスでつぼみを食用野菜として利用するための優良品種が多く作出されている。
大型の根生する葉は,裏面は白色綿毛を密生,羽状深裂し,初夏から夏へかけて高さ1.5mぐらいの太い茎を出して,その頂に直径15cmぐらいの大きい紫色の頭状花を咲かせる。つぼみの総苞片内の肉質部をゆでて食用とするほか,その花を切花として観賞する。温暖な排水のよい粘質土地に適し,堆肥などの有機質肥料を元肥として多く施して栽培をする。繁殖は株分けのほか,実生,あるいは根ざしによる。
執筆者:柳 宗民
フランス,イタリアでは欠かせない野菜で,調理法も多彩であるが,一般にはなまのまま,または塩ゆでにして酸味のあるソースを添えてオードブルなどにする。つぼみはゆでる前に,茎の根もとと上部1/3ほどのところを切り取り,切口をレモンでこすってあくどめをしてから,薄塩の熱湯でゆでる。可食部は外側の鱗片状の萼の内部の肉と,基部の花托の部分で,前者は1枚ずつはがしてソースをつけ,歯でしごくようにして食べ,後者はナイフで切って食べる。また花托は周囲の固い部分を取り除いて水盤状になったものを,二つ割程度に大きく切ってソテーにしたり,あるいは中に詰物をして,肉料理の付合せなどにする。
執筆者:平野 雄一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
キク科(APG分類:キク科)の多年草。和名チョウセンアザミ(朝鮮薊)は、異国から渡来したアザミに似た植物というほどの意味であろう。地中海沿岸原産で、もとは食用として栽培されてきたが、近年切り花としての需要も多い。南ヨーロッパの野生アザミが改良されたカルドンをさらに改良してアーティチョークが生じたといわれる。現在はフランスで栽培が盛んである。
外形はアザミに似て大形、高さ2~3メートルになる。葉は互生して大きく、羽状に深く裂け、裂片の先は刺(とげ)状になる。裏面には白い綿状の毛が密生する。初夏に直径15センチメートルほどの紫色の頭状花をつける。総包葉片は肉質で卵状長楕円(ちょうだえん)形、刺はない。種子は細長く、長さ6~7ミリメートル、灰色で角張る。根はゴボウ状に発達する。
[星川清親 2022年1月21日]
繁殖は株分けまたは実生(みしょう)による。日当り、水はけのよい土地を好む。晩秋や早春に株分け、仮植えした苗を初夏に定植する。あるいは早春に温床で播種(はしゅ)して苗を育て、初夏に定植する。翌年、初夏に出るつぼみを、花弁が開く直前に収穫する。
[星川清親 2022年1月21日]
古代ギリシア・ローマ時代から野菜として利用されたが、栽培の記録では15世紀のイタリアのものがもっとも古い。日本へは江戸時代に初めて渡来したが普及しなかった。また、第二次世界大戦後も進駐軍用にかなり栽培されたが、一般には普及しなかった。アーティチョークは西欧人が好む野菜で、彼らの食事にもっともポピュラーなものといえる。西欧の食生活をなんでも受け入れた日本人が、文明開化以来100年以上これを受け付けないのは不思議なことである。房総半島や三浦半島、長野県、徳島県、九州などでつくられているが、生産量は少ない。アメリカやフランスなどから輸入している。
開花直前の花蕾(からい)を、姿のまま、レモン汁と塩を加えた湯で下ゆでし、総包葉片をはがしながら、各種のソースをつけて、根元の肉厚の部分を歯でしごいて食べ、花托(かたく)(ボトムとよぶ)も切りながら食べる。また、裏漉(うらご)ししてムースやスープの材料にする。グラタン、フライ、サラダなどにも使う。下ごしらえのときには、変色を防ぐため、切り口をレモンでこする。フランスでは生食もする。
[星川清親 2022年1月21日]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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