イグアス滝(読み)イグアスたき(英語表記)Iguaçu (Iguazú) Fall

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イグアス滝」の意味・わかりやすい解説

イグアス滝
イグアスたき
Salto do Iguaçu

スペイン語では Cataratas del Iguazú。パラナ川左岸支流,ブラジルとアルゼンチンとの国境をなすイグアス川最下流部にかかる滝。パラナ川との合流点より約 20km上流,イグアス川が玄武岩質溶岩から成るパラナ高原から「悪魔ののど」と呼ばれる峡谷に流下するところに形成されたもので,馬蹄形をなす断崖に幅約 4kmにわたってかかり,落差は 60~82m。高原縁辺の小島や断崖から突出した岩棚によって河水は 270以上の滝に分れて落下,落下地点から立ちのぼる水煙は高さ 150m以上に達し,虹がかかって美しい光景を出現させている。河中を含め周辺一帯にはラン,マツ,タケヤシ,ツタ,ベゴニアなど多種の植物が茂り,岩棚には滝や急流の中にしか生育しないカワゴケソウ科の植物もみられる。幅,落差とも北アメリカのナイアガラ瀑布をしのぐ大規模な滝で,毎秒流量は年平均約 1756m3,11月~3月の雨季には最大1万 2750m3と膨大な包蔵水力をもつが,現在までのところおもに観光資源として利用されており,両国とも滝を中心とした一帯をイグアス国立公園に指定している。パラナ川の水運あるいは空路で訪れる観光客が多い。 1541年この滝を訪れたスペイン人がサンタマリア滝と名づけたが,その後再び先住民であるインディオグアラニ族言葉で「大きな水」を意味するイグアスの名で呼ばれるようになった。 18世紀にはイエズス会宣教師によって調査が始められたが,まもなく中断,滝の地形図が完成したのは 1892年になってからである。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イグアス滝」の意味・わかりやすい解説

イグアス滝
いぐあすたき
Iguaçu (Iguazú) Fall

ブラジル南部、アルゼンチンとの国境にある大瀑布(ばくふ)。パラナ川の支流イグアス川にかかる。サンタ・マリアの滝ともよばれる。落差は最高80メートル、平均70メートル。北アメリカのナイアガラ滝、アフリカのビクトリア滝とともに世界三大瀑布の一つとされている。流量は平均で毎秒1750立方メートルといわれ、ナイアガラ滝などに比べ少ないが、幅2700メートルの馬蹄(ばてい)形の落ち口から270余りの小滝に分かれて落ちる様相は壮観である。滝は、パラナ川、イグアス川合流点(ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ3国国境)より23キロメートル上流にあり、パラナ川流域に広く分布する中生代の玄武岩質溶岩層にかかっている。多くの部分では中ほどに1段小さな段をもち、2段に分かれて落下している。全幅のうち約600メートルがブラジル、残りはアルゼンチンに属す。両国における代表的観光地で、周囲20万5000平方メートルおよび7万5000平方メートルは、それぞれブラジル、アルゼンチンのイグアス国立公園に指定されている。

[松本栄次]

世界遺産の登録

アルゼンチンとブラジルの両国にまたがるイグアス滝とその周辺地域はそれぞれの国立公園に指定され、ともに1984年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により「イグアス国立公園」として世界遺産の自然遺産に登録された(世界自然遺産)。

[編集部]


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