日本大百科全書(ニッポニカ) 「イッテンサクラダイ」の意味・わかりやすい解説
イッテンサクラダイ
いってんさくらだい / 一点桜鯛
onespot sea bass
[学] Odontanthias unimaculatus
硬骨魚綱スズキ目ハタ科ハナダイ亜科に属する海水魚。相模湾(さがみわん)、駿河湾(するがわん)、和歌山県南部、土佐湾などの太平洋岸、沖縄舟状海盆(しゅうじょうかいぼん)(トラフ)、小笠原(おがさわら)諸島、台湾、フィリピンなどの海域に分布する。体は卵円形で、体高は高い。上顎(じょうがく)の後端は瞳孔(どうこう)の中央下をわずかに越える。主上顎骨は後方に向かって幅が広くなる。上下両顎に小さく絨毛(じゅうもう)状の歯帯がある。上顎の歯帯の最外列に大きな犬歯状の歯があり、前方の内側に3本、先端近くの側方に大きな1本の犬歯がある。下顎では先端に1対(つい)、側方の前部に1本の大きな犬歯がある。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)に菱形(ひしがた)の絨毛状歯帯があり、前縁近くの歯はやや大きく、そのうちの1本は犬歯状。口蓋骨、舌上に絨毛状の歯帯がある。前鰓蓋骨(しゅさいがいこつ)の後縁は鋸歯(きょし)状で、隅角(ぐうかく)部の1本は大きい。主鰓蓋骨に3本の棘(きょく)がある。体はやや大きな櫛鱗(しつりん)で覆われ、口唇と眼前部、下顎、峡部(腹面の前端部。後方に向かって喉部(こうぶ)、胸部と続く)には鱗(うろこ)がない。背びれの棘部と軟条部に欠刻(切れ込み)がなく、第3棘は最長であるが、伸長しない。その先端に伸長した鰭膜(きまく)が付着する。背びれの大部分の軟条は伸長する。臀(しり)びれの第2棘と第3棘はほとんど同長。臀びれ軟条は伸長しない。胸びれは18~19軟条で、長くて、臀びれ起部上方に達する。腹びれは伸長し、臀びれ軟条部に達する。尾びれの後縁は湾入し、両葉はやや伸長する。体色は橙赤(とうせき)色で、吻端(ふんたん)から目の下方を通って鰓蓋に達する黄色の斜走帯がある。背びれ第3棘の先端についた鰭膜は黒い。最大体長は20センチメートルほどになる。水深60~190メートルの沿岸の岩礁域にすみ、まれに釣りや底引網でとれる。
本種はイッテンサクラダイ属に属する。同属は体高が高いハナダイの仲間で、日本からは本種を含めて5種が知られている。本種は背びれ軟条が14本で、第3背びれの先端に黒い鰭膜をもつことで他種と区別できる。
[尼岡邦夫 2021年8月20日]