イワナシ(読み)いわなし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イワナシ」の意味・わかりやすい解説

イワナシ
いわなし / 岩梨
[学] Epigaea asiatica Maxim.

ツツジ科(APG分類:ツツジ科)の常緑小低木。茎は細く、赤褐色の長毛があり、低く地面に伏して生える。葉は互生し革質で、卵状長楕円(ちょうだえん)形、長さ5~10センチメートル、全縁で両面に粗い毛がある。4~5月、枝の先に淡紅色の花が総状について開き、花冠は筒状の鐘形、長さ約1センチメートルで先が5裂する。萼(がく)は5裂して先がとがり、包葉とともに紅紫色を帯び、雄しべは10本。果実は夏に熟し、扁球(へんきゅう)形、径約1センチメートルで、短毛がある。胎座白色多肉質となり、甘くて食べられ、ナシの果肉に似るのでイワナシといわれる。山地の林下に生え、北海道西南部から本州の日本海側に分布する。鉢植えにして観賞され、京都府の丹波(たんば)地方では岩梨酒をつくる。イワナシ属は日本に1種と北アメリカに1種分布する。

 アメリカのイワナシE. repens L.は雌雄異株で、普通名はtrailing arbutus(這(は)うイワナシ)またはmayflower(メイフラワー)という。後者は、1620年にイギリスから清教徒一団がアメリカに渡ったとき、翌春、この花がいち早く開いたので、乗船してきたメイフラワー号を記念してつけられたという。マサチューセッツ州州花である。なお、イギリスでは、メイフラワーはバラ科サンザシのことをさす。

小林義雄 2021年4月16日]


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改訂新版 世界大百科事典 「イワナシ」の意味・わかりやすい解説

イワナシ
Epigaea asiatica Maxim.

山地の林縁の斜面などに見られる,ツツジ科の常緑小低木。茎は匍匐(ほふく)して赤褐色の長毛があり,早春,淡紅色の花が咲く。茎はまばらに分枝して地をはって広がり,長さ10~25cm。葉は互生し,卵形で先はとがり,長さ4~10cm,幅2~4cm,革質で縁に粗い毛がある。枝先に総状花序を伸ばし数個の花をつける。苞葉は披針形で目立つ。花冠は筒形で先が5裂し,中に10本のおしべがある。果実は蒴果(さくか)であるが,果皮が薄く,胎座が肥大して液質となり,液果のように見える。白い肉質の胎座の表面に黒褐色の多数の種子がつく。北海道南西部,本州の主に日本海側に生育する。果実は甘く,ナシのような味がする。胎座が肥大する性質は,ツツジ科の中では他に見られないイワナシ属の特異な形質で,他に北アメリカに1種,カフカス地方に1種の計3種しかない珍しい植物である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イワナシ」の意味・わかりやすい解説

イワナシ
Epigaea asiatica; trailing arbutus

ツツジ科の常緑小低木で,北アメリカに同属の近縁種が1種ある。日本では北海道と本州に生える。茎は細く木質でまばらに分枝し,褐色の毛がある。葉は卵状長楕円形で長さ4~10cm,質が硬い。両面にあらい毛が生え,特に縁の毛は著しい。早春,枝先に大型の包葉のある総状花序をつける。花は数個,花冠は筒状鐘形で紅紫色で美しい。果実は丸く,径 1cm,表面に短い腺毛が密生し,夏に熟する。胎座の肥大した部分は甘く,食べられる。

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百科事典マイペディア 「イワナシ」の意味・わかりやすい解説

イワナシ

ツツジ科の常緑小低木。本州,北海道の山地にはえる。高さ10〜20cm,茎に褐色の毛がある。葉は互生し,長楕円形で革質,縁に毛が多い。春,枝の先に花穂をつけ,淡紅色で長さ約1cm,鐘状の花が開く。果実は白色で丸く,腺毛が多く,食べられる。

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