インドネシア・マレー人(読み)いんどねしあまれーじん(その他表記)Indonesian-Malay race

日本大百科全書(ニッポニカ) 「インドネシア・マレー人」の意味・わかりやすい解説

インドネシア・マレー人
いんどねしあまれーじん
Indonesian-Malay race

インドシナ半島からマレー諸島にかけて東南アジア一帯に広く分布する複合人種をいう。インドネシアマレー人種ともよばれる。人口は9000万人以上とみられる。概括的な分類によればモンゴロイドに属するが、モンゴロイドの特徴を典型的な形でもつアジア・モンゴロイドと区別されて、しばしばインドネシア・モンゴロイドIndonesian-Mongoloidともよばれる。この東南アジア諸地域は、地形の複雑さと有史前からの歴史の変遷に伴って、人種そして文化の吹きだまりとなっている。

 インドネシア・マレー人は、モンゴロイド同様、その起源系統について諸説があり、決定的なことはいえない。インドシナ半島平地部に居住するアンナン人やタイ人などをインドネシア・マレー人に入れることもあるが、これらは南部モンゴロイドに入れるほうがよい。

[香原志勢]

分類と分布

H・V・バロアによれば、この複合人種は便宜上、原マレー人Proto-Malays(旧マレー人、古マレー人)と第二次マレー人Deutero-Malays(続成マレー人、新マレー人)の2群に分けることができる。

 原マレー人は、かつては東南アジアに広く分布していたものであるが、南下してきた南部モンゴロイドに圧迫され、今日ではインドシナ半島では奥地の山岳地帯に住むようになった。モイ諸族はその代表的なもので、そのほか、アッサム雲南ビルマなどにもみられる。また、島嶼(とうしょ)地方に関しては、大島ではその内陸部、そして多数の小島に分布している。これらの地方では、彼ら以前に侵入していた少数者のネグリトの要素を包含した形跡がみられる。原マレー人の例としては、ボルネオカリマンタン)のダヤク、フィリピンのイゴロットジャワ島のテンゲレル、スマトラ島のバタックなどが著名であり、台湾の山地民の一部もこのなかに入れられる。これまでは、比較的素朴な生活を営むものが多かった。

 第二次マレー人は、マレーシアの海岸地帯およびジャワに稠密(ちゅうみつ)に分布している。原マレー人に比べて、モンゴロイド的特徴をはるかに多くもっている。おそらく、南部モンゴロイドが2000~3000年前に、高度なインド文化を携えて、大陸のより中央部からマレー半島およびスンダ列島沿いに侵入し、原マレー人と混血したものであろうと推測される。その流れをくむ集団は船を使い、太平洋やインド洋に雄飛したという想定もあり、ポリネシア、メラネシアなどに渡来・植民したとも考えられるが、確証はない。紀元後数度にわたってインド洋を越え、マダガスカル島に移住し、当地に先住のネグロイドと混血した。それがマラガシーである。

[香原志勢]

形質

インドネシア・マレー人は、程度の差はあるが、かなり色の濃い皮膚をしている。鼻は低く、とくに鼻根部がくぼむ。髪は直毛であるが、原マレー人ではやや波打つ。髭(ひげ)や体毛は少ない。唇は比較的厚く、歯槽性突顎(とつがく)がみられる。ほお骨は張り出す。第二次マレー人の顔は平面的で、上下に短く、下顎が張っているため、角張った顔になる。原マレー人はそれより細長い顔である。原マレー人の眼裂は水平で、内眼角ひだを欠く。しかし、第二次マレー人の目はつり上がり、内眼角ひだをもつものがみられる。身長は世界の平均より低く、そのうち原マレー人(155~160センチメートル)は第二次マレー人(160~163センチメートル)よりなお低い。原マレー人は一般に中頭(平均頭長幅示数78.5)であるが、第二次マレー人は短頭(平均頭長幅示数85)である。

 以上のように原マレー人はモンゴロイド的特徴が希薄である。これについては、コーカソイド的特徴が混入しているからだという解釈もあるが、むしろ、寒冷適応を経る以前のモンゴロイドの姿を示すものだと考えたほうがよいであろう。

[香原志勢]

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