改訂新版 世界大百科事典 「インフォーマルグループ」の意味・わかりやすい解説
インフォーマル・グループ
informal group
ある目的達成のため意識的に形成された経営体や官庁などの組織において,フォーマルな関係の内部での自生的かつ長期的関係をいう。この存在をはじめて指摘したのは,アメリカのウェスタン・エレクトリック会社のホーソーン工場で1924-32年に行われたホーソーン実験で,作業能率・生産性と人間関係,監督のあり方と作業者の労働意欲との関係を明らかにした。フォーマルな関係が志向するのは〈能率〉であるのに対し,インフォーマルな関係は,メンバーの社会的関係,是認,友情,威信などの欲求充足のために形成される。インフォーマル・グループ形成の具体的な起因には,フォーマルな関係の内部での機会に加え,共通の関心や趣味などの仕事外での共通性がある。メンバー間の相互関係が深まるにつれ,メンバー間にある共通の感情が生じ,グループとしての自律性が現れ,各メンバーが暗黙のうちに従う行動規範が形成される。この規範がグループの各メンバーの行動を規制するという機能を果たすことになる。長い間,インフォーマル・グループは,フォーマルな関係に対しマイナスの作用をもつもの,いわば除去されるべき攪乱要因と考えられてきた。しかし,現在では,インフォーマルな関係は,フォーマルな関係における欠陥を補うという機能,たとえば円滑なコミュニケーションのための潤滑油としての機能を果たすプラスの側面が強調されている。また,インフォーマルな関係が認知され制度化されると,それがフォーマルな関係に組み入れられ,新たなフォーマルな関係をつくり出すという側面も重要である。
執筆者:岡本 秀昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報