日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
インフォーマル・グループ
いんふぉーまるぐるーぷ
informal group
企業体や官公庁など合理的な仕組みをもつフォーマルな職場組織の内部に自然発生する非公式な集団。元来は産業社会学の用語であるが、今日では経営学やリーダーシップ論にも応用される。フォーマル組織の合理的な制度に適応しきれず欲求不満に陥る人間にとって、インフォーマル・グループは、人間的な情緒性や個性の触れ合いを通じて人格的に参加できる準拠集団となり、仲間の社会的承認によって心理的に安定できる貴重な場となる。そこには暗黙の集団規範や道徳律ができ、各人はそれにより思考や行動の様式を制約されるが、この非公式な規範は、メンバーが人間的に了解し適応できるうえ、集団から孤立して心理的よりどころを失うことをおそれるので、彼らは自発的に服従して集団の維持を図ろうとする場合が多い。フォーマル組織との関係については、その目的遂行活動を妨げたりゆがめたりするとしてインフォーマル・グループの逆機能が論じられることが多かったが、最近では両者は相互依存、補完関係にあるものとして複合的にとらえる見方が生じている。とくに、集団主義的慣行をもつ日本の職場では、独特の義理や甘えの論理も通用する各種のインフォーマル・グループが存在し、それらを活用してフォーマル組織の合理性に有機的につなぐための仕組みがくふうされており、経営管理活動においてもそれが積極的に応用されていることが多い。
[杉 政孝]