改訂新版 世界大百科事典 「ウェーザー川」の意味・わかりやすい解説
ウェーザー[川]
Weser
ドイツ中央部をほぼ南北に流れ,北海に注ぐ川。中部ドイツ,チューリンガー・ワルト南西斜面に源を発するウェラWerra川(全長292km)と,その西のレーン山脈中に源を発するフルダFulda川(全長218km)が互いにほぼ北流し,ハノーファーシュ・ミュンデンHannoversch-Mündenで合流して,それより下流部をウェーザー川という。ハノーファーシュ・ミュンデンより下流部の全長は440km。流域面積4万5300km2で,エルベ川とライン川の流域にはさまれる。ウェーザー川はその合流点から曲流しながらウェーザー山地の低い丘陵地を北および北西へ向かって流れ,ポルタ・ウェストファリカ(ウェストファーレンの門)でウィーエン山地を横切って,北ドイツ平野に出る。ここからは旧期氷堆石地域のゲーストと呼ばれるやせ地を北流あるいは北西流し,ブレーマーハーフェンで北海に注ぐ。ハノーファーシュ・ミュンデンまでの全域にわたって航行可能。上流部フルダ川に注ぐエダー川には高さ45mのエダー・ダムがあり,長さ27kmに及ぶ貯水池は早春の高水時に水を集めヘッセン州に電力を供給するほか,水量の少ない夏にもウェーザー川の航行をカッセルまで可能にした。また,ブレーメンより下流部では水深が大で,大洋航行船舶が往来し,水上交通路として重要である。支流のフンテ川,アラー川なども舟運に利用される。さらにミンデン付近でミッテルラント運河と交差して,エムス川,エルベ川の水運と連絡し,下流部フンテ川からは海岸運河によって,エムス川と結ばれている。ハンブルクに次ぐドイツ第2の港であるブレーメンは,ウェーザー川を約65kmさかのぼった所に位置するが,貨物船により海外諸国から原料を安く輸入できるため,羊毛,綿花,タバコ,コーヒー,金属などの加工工業が発達している。河口のブレーマーハーフェンは1872年に建設された港で,ブレーメンの外港の役割を果たしている。
執筆者:武田 むつみ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報