ウォルムス国会(読み)ウォルムスこっかい

改訂新版 世界大百科事典 「ウォルムス国会」の意味・わかりやすい解説

ウォルムス国会 (ウォルムスこっかい)

1521年,神聖ローマ皇帝カール5世ウォルムスに召集した,彼の治世最初の帝国議会。皇帝は,即位早々フランスとの戦争を目前にひかえていたため,この国会帝国諸侯の財政的・軍事的支援を要求した。一方,諸侯の側は,スペイン王でもあるカールの権力増大をおそれ,援助見返りに,皇帝不在の期間ドイツの政治を指導する帝国統治院設置を認めさせた。続いて,前年ローマ教皇から異端として破門宣告を受けた宗教改革者,ルター喚問が行われた。この措置は,事情聴取なしに帝国としての有罪判決を下すべきでないとする,ザクセン選帝侯らの働きかけによるものである。しかし,4月17~18日,皇帝から異端的な所説の取消しを求められたルターは,聖書良心にもとづいて断固これを拒んだ。その結果,皇帝は国会解散の直後,〈ウォルムス勅令〉を発してルターから帝国公民権を奪い,その著書の禁圧を命じた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウォルムス国会」の意味・わかりやすい解説

ウォルムス国会
うぉるむすこっかい
Reichstag zu Worms

宗教改革を唱えるルターを召喚した、皇帝カール5世即位後最初のドイツ国会。国会は1521年1月27日に開会されたが、とくに主要な議題となったのはルター問題である。皇帝の喚問に応じて、ルターが市民歓呼のうちにウォルムス市に到着したのは、4月16日であるが、次の日、彼は皇帝らの面前に出頭し、その教説の取消しを迫られた。彼は小考ののち、その翌日(18日)皇帝に対し決然と拒絶の返事をするが、その最後のことば、「聖書の証(あかし)によって、あるいは明白な理由と根拠によって納得させられない限り、私は取り消すことはできない。私はここに立つ。神よ、助け給え、アーメン」は有名である。ルターはウィッテンベルクへの帰国途上、ザクセン選帝侯によってワルトブルク城に保護され、聖書のドイツ語訳に専念することになる。他方、皇帝は同年5月ウォルムス勅令を発布して、ルターを明白な異端者と宣告し、彼の書物焼却、援助の禁止などを布告、宗教改革はここにクライマックスを迎えた。

[瀬原義生]

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百科事典マイペディア 「ウォルムス国会」の意味・わかりやすい解説

ウォルムス国会【ウォルムスこっかい】

1521年神聖ローマ皇帝カール5世が召集した国会。帝国統治院の設置などが決定されたほか,ローマ教皇から破門宣告を受けていた宗教改革者ルターが喚問された。皇帝は福音主義的教義の撤回を要求したがルターはこれを拒否して帝国追放を宣告され,ザクセン選帝侯フリードリヒ3世を頼ってワルトブルクにのがれた。

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世界大百科事典(旧版)内のウォルムス国会の言及

【キリスト教】より

…おそらく1513年から15年にかけての《詩篇講義》のさなかに回心し,つづく《ローマ人への手紙講義》において福音的な〈神の義〉の認識へと進んだ。1517年10月31日にウィッテンベルク城教会の扉にはった〈九十五ヵ条提題〉は,贖宥への神学的原理的反論であったが,教会法や司教裁治権に抵触するところ多く,教皇庁は黙視できなくなり,ハイデルベルク討論(1518)やライプチヒ討論(1519)を経て,ウォルムス国会(1521)でついに破門教書を発行するに至った。ルターはすでに《キリスト者貴族に与える書》《教会のバビロン捕囚》《キリスト者の自由》などを刊行して改革を広く訴えていたし,ザクセン選帝侯フリードリヒの強い支持で,政治的にも改革を進めることができた。…

【宗教改革】より

…時のドイツ(神聖ローマ帝国)皇帝カール5世は,スペイン王でもあり,厳格なカトリック信者だったが,彼は,皇帝選挙のさい恩義をこうむったザクセン選帝侯への政治的顧慮からしても,ルターの処置について,教皇の意のままには動かなかった。21年春ウォルムスで開かれた帝国議会(ウォルムス国会)に,皇帝がルターの出頭を求め,いまいちど〈異端的〉な所説を撤回する機会を与えたのはそのためである。しかしルターはあくまで良心を曲げず,取消し要求に応じなかったので,皇帝はウォルムス勅令を発して彼の帝国公民権を奪い,その著作の禁圧を命じた。…

※「ウォルムス国会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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