改訂新版 世界大百科事典 「ウスユキソウ」の意味・わかりやすい解説
ウスユキソウ
edelweiss
lion's foot
Leontopodium
茎・葉ともに白い綿毛でおおわれた様子を薄雪にたとえて,和名はつけられた。世界で約50種が知られているキク科の多年草の属名で,日本には5種ある。ウスユキソウの名を有名にしたのはヨーロッパ・アルプスの登山家たちの憧れの花エーデルワイスL.alpinum Cass.(ドイツ語名Edelweiss)であるが,属の分布の中心はヒマラヤから中国中・南部の高地で,そこには三十数種が生育する。いずれの種も,花の基部に数枚から十数枚の苞葉が発達する。それらの苞葉は白綿毛によって密におおわれているうえに,放射状に並んでいるために,全体として花のように見える。個々の種によって多少の違いはあるが,この花部の様子がウスユキソウ属に共通する特徴である。エーデルワイスの苞葉はみごとな雪白の綿毛におおわれ,花としての直径は3cmを超すが,ウスユキソウ属の中でとくに変わった特徴を持つわけではない。日本産のものでは,岩手県早池峰山と北海道大平山で見られるハヤチネウスユキソウL.hayachinense(Takeda)Hara et Kitam.がエーデルワイスに最もよく似ている。また,ミヤマウスユキソウL.fauriei(Beauv.)Hand.-Mazz.やヒメウスユキソウL.shinanense Kitam.も全草の大きさや茎葉の形などに違いはあっても,基本的なつくりの点では同様である。
これに対してウスユキソウL.japonicum Miq.(英名Japanese edelweiss)では,茎葉の発達は良いが,根出葉は悪く花期には枯死してしまう。花は多数の小花からなる頭花で,開花直径は5mm内外。普通数個から10個ほどの頭花が密集してつき,その基部に苞葉がつく。小花には雌花と両性花とがある。頭花では中心に十数個の両性花が,そのまわりに雌花が多数並んでいる。雌花の子房は結実して果実になるが,両性花の子房は結実しない。果実は長さ1.5mm内外と小さい。ウスユキソウは山地から亜高山帯に生えるが,他の種はいずれも高山帯に生育する。ロックガーデンや鉢植えで観賞用に栽植される種が多く,また乾燥した押花がみやげ物として売られる。中国では一部の種が,腎炎やせき止めの民間薬として利用される。
執筆者:小山 博滋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報