ウバウオ(その他表記)clingfish

改訂新版 世界大百科事典 「ウバウオ」の意味・わかりやすい解説

ウバウオ (姥魚)
clingfish

ウバウオ目ウバウオ科Gobiesocidaeの魚の総称。ウバウオの仲間はほとんどが体長10cm以下の小魚で,海岸の浅瀬潮だまりに生息する。数も少なく,石の下や海藻の間に隠れているので人目にはつきにくい。体にはうろこがなく,左右の腹びれと皮膚のひだが合わさってできた吸盤で物に吸いつく。この吸盤はハゼ類のものより大きく吸着力が強い。世界中の温帯から熱帯にかけて分布し100種ほどが知られる。中には体長30cmに達する大型種,ウニと共生してその管足を食べる種,海を離れた淡水にすむ種もある。ウバウオAspasma minimaは体長6cm,太平洋側の千葉県以西と沖縄に分布する。体色周囲のようすに従って黒褐色から薄黄色までの広い範囲で変わり,ときとしてひれや体に斑点が出ることがある。春の産卵期には雌雄一組が石の下の産卵室に入り,石の下面に卵を産みつける。孵化(ふか)した幼魚は20日ほど浮遊生活を送るが,やがて親魚と同じすみ場所に移る。小動物を食べて育ち1年で成熟する。産卵を終えるとまもなく死ぬ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウバウオ」の意味・わかりやすい解説

ウバウオ
うばうお / 姥魚
cling fish

硬骨魚綱ウバウオ目ウバウオ科Gobiesocidaeの海水魚の総称、およびそのなかの1種名。この科の仲間は全長10センチメートル以下の小形魚で、体は雄のほうが雌より大きい。頭部が平たく体に鱗(うろこ)がない。背びれは一つで、腹びれは左右が癒合して吸盤となる。世界中の温帯、熱帯の浅海に分布し、波打ち際岩礁や潮だまり、あるいは海産植物群落内に生息する。腹びれの吸盤で他物に吸着し、小動物を捕食して生活する。世界中からは33属約90種が知られており、日本からは現在までウバウオ、ミサキウバウオ、ツルウバウオ、アンコウウバウオ、ホソウバウオ、ハシナガウバウオ、ウミシダウバウオの7属7種が知られている。

 和名ウバウオAspasma minimaは、千葉県以南の本州と沖縄本島の海域に分布する。全長は7センチメートル以下で、背びれと臀(しり)びれは小さく、腹びれの吸盤は前後の2部に仕切られている。カジメやホンダワラなどの褐藻類群落にすみ、葉体の上で吸着生活を送る。1年で成熟し、春から初夏の産卵期がすむと死ぬ。

[中坊徹次]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウバウオ」の意味・わかりやすい解説

ウバウオ
Aspasma minima

スズキ目ウバウオ科の海水魚。全長約 6cm。体は無鱗で,前半は縦扁し,後半は側扁する。腹鰭は吸盤状。眼は活発に動く。周囲の色彩に従って体色を変化させる。潮だまりの石や海藻などに吸着している。青森県・千葉県以南に分布する。

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