ウラン鉱物(読み)ウランこうぶつ(その他表記)uranium mineral

改訂新版 世界大百科事典 「ウラン鉱物」の意味・わかりやすい解説

ウラン鉱物 (ウランこうぶつ)
uranium mineral

ウランを含む鉱物をいう。ウランは還元環境下で+4,酸化環境下で+6の原子価をとる。後者はふつうウラニル(UO22錯イオンとなって容易に水に溶け,運ばれる。このためウランを含む鉱物種は多く,主成分とするものだけでも約140種ある。主要鉱石鉱物は,U4⁺を含む種にはセンウラン鉱UO2ピッチブレンドはこの変種),コフィン石coffinite U(SiO41xOH4x,ブランネル石brannerite(U,Ca,Th,Y)(Ti,Fe)2O6などがあり,おおむね黒~暗褐色比重が大きい。U6⁺を含む種にはリン灰ウラン石Ca(UO22(PO42・10~12H2O,リン銅ウラン石Cu(UO22(PO42・10~12H2O,ウラノフェンuranophane Ca(H3O)2(UO22(SiO43・3H2O,カルノー石K2(UO22(V2O8)・3H2Oなどがあり,黄,緑系統の鮮やかな色のものが多く,微晶が母岩中に散点したり,皮膜となって割れ目を覆ったり,堆積岩中の植物片を置き換えたりして産する。リン灰ウラン石など数種は紫外線により鮮黄緑色系の蛍光を発し,探査・同定に利用される。

ウラン鉱石には,これらウラン鉱物を含むもののほか,ウランが粘土鉱物沸石,有機物などに吸着された形で存在するものもある。鉱石のもつ放射能の大半はウランの放射性崩壊で生じた各種放射性同位体からのものなので,放射能の強さと鉱石品位が常に対応するとは限らない。採掘できる品位の目安はおよそ0.1%U以上とされることが多いが,この値は操業条件によって上下するので,国際統計では品位を直接基準とするのをやめ,〈金属ウラン1kgを含む鉱石当り採掘・処理費用が80米ドル以下でまかなえ,合理的手法で確かめられた鉱石の量〉を確定埋蔵量として計上することとしている。世界のウラン資源総量は,ソ連,中国,東ヨーロッパを除き,1981年1月現在,この基準で174万7000t(うち日本は7700t)である。また,この時点での五大資源保有国は,アメリカ(36.2万t),オーストラリア(29.4万t),南ア(24.7万t),カナダ(23.0万t),ニジェール(16.0万t)である。

巨視的にみた場合,既知のウラン資源は先カンブリア界(特に17億年よりさらに古い地質時代)の大陸地殻中にあるものと,古生代中期(約4億年前)~現在の間に,堆積岩,酸性火成岩中に形成されたものとにほぼ二大別でき,それらはさらに以下の鉱床タイプに区分することができる。

(1)石英レキ(礫)岩型鉱床 地球大気が無酸素だった時代(約22億年以前)に形成され,そのままウランが酸化・溶脱をまぬがれて現在まで残った当時の砂鉱床。主産地はカナダのエリオット・レーク,南アフリカ共和国のウィットウォーターズランド(金を伴う)など。

(2)原生代不整合関連型鉱床 19億~22億年前(一部はそれ以後)の形成。いったん酸化されたウランが不整合面(基盤岩と被覆層の境の面)沿いに移動・再沈殿したものとされている。一部は基盤岩の割れ目に浸透し,一見鉱脈状を呈する。オーストラリア北部のパイン・クリーク地向斜帯,カナダのビーバーロッジ地区など。

(3)鉱染型鉱床,接触交代型鉱床,ペグマタイト型鉱床 酸性深成岩・変成岩中や岩体境界部に形成され,変成岩中ではNi,Co,ペグマタイト中ではZr,Th,希土類元素などを伴う。ナミビアのレッシングは鉱染型大規模鉱床の例。

(4)鉱脈型鉱床 花コウ岩質マグマの固結時に残液中に濃集したウランが鉱脈を作ったもの。フランスのマシフ・サントラル,東ヨーロッパのエルツ山地など。

(5)砂岩型鉱床 含ウラン地下水が砂岩層中を通過する際に還元され,ウランが再沈殿してできた鉱床。(1)(2)とともに資源として重要。アメリカのコロラド高原など。日本の人形石で有名な人形峠(岡山・鳥取県境),東濃(岐阜県南東部)もこの型に属する。

(6)表成型鉱床 ウランを含む水が乾燥気候下で蒸発,他の塩類とともにウラン鉱物が沈殿したもの。オーストラリアのイーリリーなど。

(7)その他 酸性溶結凝灰岩(アメリカ西部,メキシコなど),海成黒色ケツ岩(特にスウェーデン産),リン鉱石などに含まれるウランなども,潜在的資源として注目されている。
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