ウワウルシ(読み)うわうるし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウワウルシ」の意味・わかりやすい解説

ウワウルシ
うわうるし
[学] Arctostaphylos uva-ursi (L.) Spr.

ツツジ科(APG分類:ツツジ科)の常緑小低木。クマコケモモともいう。多数の茎は地面をはって伸び、長さ0.5~1メートルの枝を上方に出し、そこに葉が密に互生する。花をつける枝はそれより短い。葉は厚い革質、全縁、倒卵形、長さ3センチメートル以下、幅1.5センチメートル以下で、先端は鈍頭または円頭で柄は短い。4~5月に枝の先に数個の花を総状花序をなしてつけ、壺(つぼ)形の花冠は淡紅色で下向きに開き、先端は5裂し、内面に毛がある。雄しべ10本、雌しべ1本、子房は上位。果実は赤色球形の液果で、クマや鳥が好んで食する。北半球の寒帯、高山帯に広く分布するが日本にはない。寒帯産の植物であるからギリシア・ローマ時代の医者はこれを知らなかった。薬用としてはイギリスで13世紀の書物に記されたのがもっとも古い。18世紀中期から葉が腎(じん)・膀胱(ぼうこう)結石の治療によく使われだした。フェノール配糖体のアルブチン、メチルアルブチンとタンニンを含有するので、尿路防腐剤、収斂(しゅうれん)利尿剤として、尿道炎、膀胱炎淋疾(りんしつ)にも用いる。ネイティブ・アメリカンはこの乾燥した葉をタバコに混ぜて喫煙した。古くは全草をヤギの皮なめしに、羊毛灰色黒色に染めるときに用いた。北ヨーロッパでは液果をパンに混ぜたり、シロップをつくって飲む。日本と北アメリカではコケモモの葉を同じ目的で薬用に供する。

[長沢元夫 2021年4月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のウワウルシの言及

【ウラシマツツジ】より

… 基本変種のA.alpina (L.) Spreng.(英名Alpine bearberry)は北半球の寒帯に分布し,葉や花が小さい。同属の別種ウワウルシ(一名クマコケモモ)A.uvaursi (L.) Spreng.(英名bearberry)(イラスト)は北半球の周極地方に分布する常緑小低木で,葉に配糖体アルブチンarbutin,タンニンなどを含み,乾かした葉を防腐収れん薬や利尿薬として用いるし,茶の代用にしている所もある。この属のいくつかの種は,ヨーロッパやアメリカでロックガーデンや庭園に栽植される。…

【漢方薬】より

…たとえば,ゲンノショウコ,ドクダミ等は広く日本の民間で用いられているが,使用法は漢方の場合とまったく異なるので通常,漢方薬には含めず,民間薬として区分する。また,ウワウルシ,ゲンチアナ,ジギタリス,麦角等は西洋医学では古くから用いられてきた生薬であるが,漢方薬ではない。要するに後述するような漢方医学の理論にのっとって用いられる生薬が漢方薬である。…

※「ウワウルシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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