経済や社会、市民生活の安定的な運営に必要な量のエネルギーを、合理的で手ごろな価格で安定的に供給確保すること。エネルギーは経済や社会にとって必要不可欠の物資である。そのエネルギーの安定供給を確保することが、エネルギー安全保障を守る、ということになる。エネルギー安全保障に問題が発生するとき、二つの形をとって現れることになる。一つは必要なエネルギーが物理的に手に入らないという「不足」の問題であり、もう一つはエネルギーの価格が著しく高騰する「価格上昇」の問題である。さらに、この二つの組み合わせで問題が起こることもある。こうした問題を発生させる原因は多様であるが、大別すると、戦争・紛争・事故・異常気象・災害などの事前の予期がむずかしく突発的に発生する緊急事態型のリスク要因と、資源の枯渇・投資不足による生産停滞や、政治的意図による生産削減、禁輸などによる構造的リスク要因がある。
エネルギー安全保障問題が世界で注目される大きな契機になったのが、1973年(昭和48)に発生した第一次石油危機およびその後の第二次石油危機であった。石油危機(オイル・ショック)で甚大な影響を被った日本をはじめとする先進国は、エネルギー安全保障を強化するため、石油依存度を引き下げるための省エネルギー政策、代替エネルギー政策に乗り出した。また、石油の輸入先を多様化し、緊急時に備えて石油備蓄を整備した。同時に産油国との関係強化のための外交政策も強化した。
エネルギー安全保障は、すべての国にとって共通して重要であり、国際協力も重要になる。そのため、石油危機を契機に国際エネルギー機関(IEA)が設立され、先進国を中心にしたエネルギー安全保障強化の国際協力が進められた。その後、IEAの国際協力の範囲を中国やインドなどの新興国や開発途上国に拡大する取組みも進められている。
エネルギー安全保障における課題は、石油危機で一気に顕在化したが、その後、問題は多様化し複雑化している。2011年(平成23)の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故では、大規模な発電設備が停止したため、電力安定供給の問題が一気に浮上した。また2009年のウクライナ危機では、ロシアからのヨーロッパ向けパイプラインガス輸出が停止され、ヨーロッパの一部の国でガスの供給途絶が発生した。最近では、異常気象の影響で電力需給の逼迫(ひっぱく)やガス・LNG(液化天然ガス)価格の異常な高騰がみられる事例も現れている。さらには、サイバー攻撃が新たなエネルギー安全保障上の課題になる、との見方も広まっている。複雑化するエネルギー安全保障の課題に対応して、エネルギーの安定供給を守ることが各国の重要課題となっている。
[小山 堅 2022年1月21日]
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