カルシフェロール(calciferol)ともいう.ビタミン D2,D3,D4 の総称(生理活性を有するのはビタミン D3 の誘導体1,25-Dihydroxyvitamin D3).それぞれ次のような化学構造をもつ.E.V. McCollum(1922年)は肝油中の抗くる病成分がビタミンAと異なった物質であることを確かめ,ビタミンDと命名したが,これとは別にA.F. Hess(1924年)らは紫外線に当たった食品中にも同様のはたらきをもった成分が生じることを発見した.A.Windaus(ウィンダウス)(1931年)は食品中のエルゴステロールが紫外線により活性化されることを明らかにし,その活性化により2種類のDを結晶化して,ビタミン D1 および D2 と命名した.しかし,前者はビタミン D2 とルミステロールとの分子化合物であることが判明し,ビタミン D1 という名称は廃棄され存在しない.【Ⅰ】ビタミン D2:C28H44O(396.65).エルゴカルシフェロール(ergocalciferol)ともいう.無色の針状または柱状結晶.融点115~118 ℃.λmax 265 nm.+103~+106°(エタノール).ビタミン D3 とともに多くの有機溶媒,油脂に可溶,水に不溶.エルゴステロールの紫外線照射(最適波長275~300 nm)によってつくられる.ビタミン D2,D3 はともに空気中で不安定であるが,窒素中-20 ℃ で保存すれば比較的安定である.ビタミン D2 の抗くる病作用は白ネズミ予防試験では40000国際単位/1 mg で,ビタミン D3 と同等である.ビタミンDの活性単位はエルゴカルシフェロール0.025 μg のもつ生物学的活性と規定されている.[CAS 50-14-6]【Ⅱ】ビタミン D3:C27H44O(384.64).コレカルシフェロール(cholecalciferol)ともいう.無色の針状結晶.融点84~88 ℃.λmax 265 nm.+103~+112°(エタノール).有機溶媒,油脂に可溶,水に不溶.プロビタミン D3,すなわち7-デヒドロコレステロールの紫外線照射により生成する.天然に存在するプロビタミンDのエルゴステロールは,酵母,シイタケなど植物界に多く存在し,7-デヒドロコレステロールは無脊椎動物類などの動物界に多く存在している.[CAS 67-97-0]【Ⅲ】ビタミン D4:22,23-dihydroergocalciferol.C28H46O(398.66).小板状結晶.融点96~98 ℃.λmax 265 nm.+85.7°(アセトン).22-ジヒドロエルゴステロールの紫外線照射により生成する.
ビタミンDの生理作用としては,小腸でCaの吸収を促進し,さらに二次的にリンの吸収を促進し,また骨からのCaの動員を促進する.ネズミの実験的くる病はビタミンD欠乏と同時にCa/P比の大きい場合に起こるが,この比が正常または小さいときには起こらない.ビタミンDの生理活性型は1,25-ジヒドロキシビタミン D3.ビタミンDの欠乏症はくる病,骨軟化症であるが,ビタミンDの過剰投与により高Ca血症,Caの異所沈着などの過剰症が起こる.[CAS 511-28-4]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…小児にみられるビタミンD欠乏症(大人ではビタミンD欠乏は骨軟化症として現れる)。佝僂はせむしの意で,この病気は古くから知られていたが,その病態は長いこと明らかではなかった。…
…長期にわたって過剰に摂取した場合には,倦怠感,神経過敏,睡眠障害,食思不振,吐き気,嘔吐などを示す慢性中毒症になる。
[ビタミンD]
脂溶性ビタミンで,くる病の予防因子として発見された。(1)生理作用 腸管からのカルシウム吸収ならびに骨からのカルシウム溶出を促進することによって,血中のカルシウムレベルの恒常性を維持していると考えられている。…
※「ビタミンD」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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