オオタニワタリ(読み)おおたにわたり(英語表記)bird′snest fern

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオタニワタリ」の意味・わかりやすい解説

オオタニワタリ
おおたにわたり / 大谷渡
山蘇花
bird′snest fern
[学] Asplenium antiquum Makino

チャセンシダ科の大形の常緑性シダ。塊状根茎から帯状の大きな単葉を杯状に散開させ、高さ80~120センチメートル。葉面は、厚い革質で濃緑色、光沢がある。胞子嚢(のう)群は中肋(ちゅうろく)から単条または二叉(にさ)になって出る葉脈の上につく。室内用観葉植物の一つで、生花にも使われる。大隅(おおすみ)半島ではこの葉で節句の餅(もち)を包み、八丈島ではコウジブタとよび、蒸したアワをこの葉で覆いコウジをつくる。近年オオタニワタリの名で花屋に並ぶものの多くは近縁シマオオタニワタリである。フィリピンではシマオオタニワタリを薬草として利用する。浄血作用や鎮静作用があるといわれる。伊豆諸島、紀伊半島以南に自生する。

[栗田子郎]

栽培

『古事記』にミツナガシワ(御綱柏)とあるのは本種で、食器の代用にされたらしい。シマオオタニワタリのほか、その園芸品種のアビスcv. Avisは観葉鉢物としてよく栽培される。野生状態とは異なり鉢栽培では葉長30~40センチメートルに育つ。葉上に不定芽を多数つける。ダウキフォリウムA. daucifolium Lam.も観葉鉢物として栽培される。アスプレニウム属は約700種あり、熱帯中心に広く世界中に分布している。

[高林成年]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オオタニワタリ」の意味・わかりやすい解説

オオタニワタリ(大谷渡り)
オオタニワタリ
Asplenium antiquum

チャセンシダ科の常緑性シダ植物。伊豆諸島,紀伊半島以西の山地の岩上や樹上に着生する。また観葉植物として温室で栽培される。塊状の根茎から放射状に多数の葉を出す。葉は単葉で,長さ 40~120cm,表面は光沢のある鮮緑色。ごく似た種類にシマオオタニワタリがある。園芸界では属名のアスプレニウムで呼ばれることも多い。

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