日本大百科全書(ニッポニカ) 「オリゲネス」の意味・わかりやすい解説
オリゲネス
おりげねす
Ōrigenēs
(185ころ―251以後)
ギリシア教父。古代キリスト教の代表的神学者。アレクサンドリアに生まれ、若くしてアレクサンドリアのクレメンスの後継者としてキリスト教を教えた。のちパレスチナのカエサレアに移って学塾を開き、古代キリスト教の一つの重要な学統の祖となった。デキウス帝の大迫害(250~251)のとき投獄され、しばらくのちに没した。
教会的信仰の基本に立脚するとともに、ギリシア哲学に通暁していた彼は、プラトン主義、グノーシス主義、マルキオンなどと折衝しながら、聖書の信仰と思想を体系的に把握し弁証することに努めた。最初の組織神学といわれる『原理論』、キリスト教弁証論『ケルソス駁論(ばくろん)』の両大著のほか、膨大な聖書注解・講解がある。とくに彼が組織化した聖書の比喩(ひゆ)的解釈法は、後代に大きな影響を及ぼした。しかし彼がヘブライ思想とギリシア思想とのはざまで、ときとして大胆な思弁的解釈を提出したことは、多くの論争を巻き起こし、異端の嫌疑を被る原因ともなった。他方、彼の厳格な禁欲的生活は、その思想とともに後の修道思想にも大きな刺激を与えた。
[水垣 渉 2015年1月20日]