オリンパス騒動(読み)おりんぱすそうどう

知恵蔵 「オリンパス騒動」の解説

オリンパス騒動

2011年に発覚した、精密機械メーカー、オリンパス株式会社の粉飾決算を巡る一連の事件のこと。同社は、1990年代のバブル崩壊に伴う有価証券投資の失敗などで巨額の損失を抱えていた。これを隠すために、海外のファンドに損失を移し替える「飛ばし」や、同社事業と無縁な小規模企業を高額買収して資金を流用する手口での穴埋め実体の乏しい投資助言会社への過大な報酬支払いなどを行っていた。これに気付いて会長らに退陣を迫った英国人社長を、就任からわずか半年で解任したことから、一連の悪質な手口が明るみに出た。経営陣が刑事責任を問われる事態になれば、同社の上場廃止も考えられる。
同社は、大正年間の創業で顕微鏡やカメラなどの光学機器の有力メーカーとして知られる。80年代には売上高2千億円程度の中堅メーカーに過ぎなかったが、グループ売上高の4割程度になる中核事業である医療機器の市場拡大のみならず、バブル期の財テクやM&Aなどで業容を拡大し、2007年度には売上高1兆円を超える規模になった。カメラ部門ではニコンキヤノンに次いで第3位、ICレコーダーや内視鏡の分野では7割以上のシェアを占める世界最大手企業である。かつては堅実な経営風土で知られていた同社だが、円高不況による業績悪化を財テクで乗り切ったことなどを契機に、バブル期には営業収益以上に営業外収益に重点を置く経営に傾いていったとされる。1990年代のバブル崩壊以降、財テク失敗によって抱えた有価証券の含み損が、2001年3月期から導入される時価会計制度によって露呈するのを避けるため、00年から複数の海外ファンドに含み損のある資産を形式的に売却し、損失を先送りして隠すなどの不正な経理操作に手を染めていった。
同様のコーポレートガバナンス欠如による不正は海外にもある。しかし、同社では経営者の詐取・蓄財が目的ではなく、問題の先送りが経営陣全体の「善意」の意思として「会社の存続」の美名につつまれて行われていた。ここに、経営者の長期留任や監査役ぐるみの不正など、説明責任を回避する「日本的会社経営」特有の危うさがあるとの海外投資家の指摘もある。なお、この騒動を巡り同社筆頭株主である日本生命は、オリンパス社を支えると表明しているが、これに先立ちグループで9%近くを保有していたオリンパス社の株を保険契約者の利益を考慮するとして売却し、現在は2位以下のメガバンクや信託銀行と大差のない出資比率となっている。

(金谷俊秀  ライター / 2011年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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