日本大百科全書(ニッポニカ) 「オージェル石」の意味・わかりやすい解説
オージェル石
おーじぇるせき
augelite
アルミニウムのみを主成分とする含水リン酸塩鉱物の一つ。アウゲル石ともいう。同系鉱物は知られていない。燐礬土(りんばんど)石という和名もあるが、リン酸アルミニウムの鉱物はほかにも数多くあるので、かならずしも適当でない。自形は八角形を基調とした厚板状、ときに柱状ないし針状。
酸性火砕岩の熱水変質作用の産物として産し、これが単独の粘土鉱床を形成する場合と、熱水鉱脈型鉱床の母岩の変質物をなす場合とがある。また広域変成岩中に発達するいわゆる白色片岩中に他のアルミニウムケイ酸塩、アルミニウムリン酸塩などと共存する。いわゆるリン酸塩ペグマタイト中に晩期生成物として産する。日本では、山口県阿武(あぶ)郡阿武町日の丸奈古(ひのまるなこ/ひのまるなご)鉱山の粘土鉱床から他のアルミニウム鉱物、葉ろう石、ダイアスポア、トパーズ、紅柱石をはじめ、トロル石trolleite(化学式Al4[OH|PO4]3)、鉄天藍(らん)石、石英などと産するのが唯一の例である。ほかに共存鉱物は、金紅石、赤鉄鉱、重晶石、電気石、白雲母(うんも)、微斜長石など。
同定は多く透明、完全な二方向の劈開(へきかい)と劈開面上での真珠光沢による。わずかに着色することもあるが、透明性は失わない。もろいため、硬度は低く感じる。鉄天藍石と共存する場合は、このものの藍(あい)色が非常に目だつので、これに伴われる劈開完全の鉱物があれば、本鉱の可能性は大きい。英名は「光沢」を意味するギリシア語に由来する(劈開面上の真珠光沢にちなむ)。
[加藤 昭 2016年1月19日]