円顔で鼻の低い,おでこでほお高の愛敬ある女の仮面。お多福ともいう。同系統の面としては狂言面に乙御前(おとごぜ)があり,男に逃げられる醜女や姫鬼,福女などに用いられる。お多福のオタが乙の転訛ともいわれるように,お多福,お亀も同様の役柄の近世芸能に使用される。特にお亀の名称は江戸の里神楽で使われ,ひょっとこと対で道化やもどき役をつとめて人気が高く,熟練者の役どころとされる。民俗芸能では単に醜女としてではなく,田遊のはらみ女,愛知県三河地方の花祭では巫女(みこ)のお供としても現われ,獅子舞や祭礼行列の道化では愛敬が強調され,酉の市の大熊手などに飾られて,福を呼ぶ面相として喜ばれる。関西では同系の面相をお福と呼び,蔑称にも用いるが,商家などでは福相として人形を飾る場合もある。東北地方では下級巫女をオカミと称し,〈おかめ〉もその一種と考えられることもある。また伊勢・尾張地方では宿場女郎や飯盛女を〈おかめ〉と称した。
執筆者:山路 興造
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