カエタヌス(読み)かえたぬす(その他表記)Thomas De Vio Cardinalis Caietanus

精選版 日本国語大辞典 「カエタヌス」の意味・読み・例文・類語

カエタヌス

  1. ( Jacobus Cajetanus ヤコブス━ ) イタリア神学者ドミニコ会総長。枢機卿(すうきけい)トマス=アクイナスの「神学大全」の注解などでも知られる。(一四六九‐一五三四

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カエタヌス」の意味・わかりやすい解説

カエタヌス
かえたぬす
Thomas De Vio Cardinalis Caietanus
(1469―1534)

トマス・アクィナスの注釈家として著名なイタリアの神学者、哲学者。ドミニコ会士、枢機卿(すうききょう)。1518年教皇権と信仰義認についてルター論争し、宗教改革に反対した。主要著作にトマスの『神学大全』の注解(『トマス・アクィナス全集』〈レオ版〉Opera Omnia Thomae Aquinatis, editoris Leoninaeに収載)と、『存在と本質について』De Ente et Essentiaの注解がある。『名の類比について』De Nominum Analogiaにおいて彼は、帰属類比を外的命名として退け、多義性に近い比例的類比を唯一真正な類比として承認し、多くの新トマス主義者に支持されたが、トマスの後期著作には適合していない。スコトゥス主義者とアベロエス主義者との論争を通じて、彼の著作には、中世最盛期の13世紀にみられなかった用語と問題がみいだされるが、魂の不滅性、神の摂理などの問題において、理性的認識はトマスほどには信頼されていない。

[宮内久光 2017年11月17日]

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改訂新版 世界大百科事典 「カエタヌス」の意味・わかりやすい解説

カエタヌス
Thomas de Vio Cajetanus
生没年:1469-1534

哲学者,トマス・アクイナス注釈家。イタリア,ガエタに生まれ,ドミニコ修道会に入り,26歳でパドバ大学トマス形而上学講座の教授に就任,同じ大学のスコトゥス派A.トロンベータ,およびアベロエス派ポンポナッツィと論戦を交え,後パビア大学に移る。1500年以降は修道会内部の要職を歴任,08年ドミニコ会総長,17年枢機卿になる。18年,教皇レオ10世の使節としてドイツに派遣され,トルコに対する十字軍の結成,およびルターからの恭順の取りつけに尽力したが,いずれも失敗に終わる。翌年ガエタの司教となり,ハンガリーなどの各国へ使節として派遣されたり,ヘンリー8世の離婚訴訟に関与するなど,教皇顧問として活動したが,晩年は研究と著述のうちに送った。最大の著作は《トマス・神学大全注解》であるが,《トマス・有と本質について注解》《名辞の類比》も有名で,ルネサンス期スコラ学復興の中心となり,後代のトマス派に大きな影響を与えた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カエタヌス」の意味・わかりやすい解説

カエタヌス
Cajetanus

[生]1469? 2.20. ナポリ,カエタ
[没]1534.8/9.10. ローマ
イタリアの宗教改革期の代表的なカトリック神学者,ドミニコ会修道士。本名 Tommaso Jacopo de Vio。カエタヌスとは「カエタの人」を意味する通称。 16歳でドミニコ会に入り,哲学と神学をナポリ,ボローニャ,パドバ大学で学び,1493~96年パドバ,97~99年パビアで教授。 1508年ドミニコ会総会長。 17年枢機卿。 18~19年教皇特使としてドイツに派遣され,ルター派との折衝にあたった。神学上はスコツス学派やアベロエス (イブン・ルシュド ) 派に対抗し,トミズムの再興に努め,トマス・アクィナスやアリストテレスの注釈書を多く書いた。主著『名辞の類比と存在の概念について』 De nominum analogia et de conceptu entisのなかで,伝統的に区別されていた3つの類比のうち,不等の類比と帰属の類比を退け,比例の類比のみを本来のものとした。また魂の不死や神の存在などは,人間理性の力では証明しえないとした。

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