トマス・アクィナスの注釈家として著名なイタリアの神学者、哲学者。ドミニコ会士、枢機卿(すうききょう)。1518年教皇権と信仰義認についてルターと論争し、宗教改革に反対した。主要著作にトマスの『神学大全』の注解(『トマス・アクィナス全集』〈レオ版〉Opera Omnia Thomae Aquinatis, editoris Leoninaeに収載)と、『存在と本質について』De Ente et Essentiaの注解がある。『名の類比について』De Nominum Analogiaにおいて彼は、帰属類比を外的命名として退け、多義性に近い比例的類比を唯一真正な類比として承認し、多くの新トマス主義者に支持されたが、トマスの後期著作には適合していない。スコトゥス主義者とアベロエス主義者との論争を通じて、彼の著作には、中世最盛期の13世紀にみられなかった用語と問題がみいだされるが、魂の不滅性、神の摂理などの問題において、理性的認識はトマスほどには信頼されていない。
[宮内久光 2017年11月17日]
哲学者,トマス・アクイナス注釈家。イタリア,ガエタに生まれ,ドミニコ修道会に入り,26歳でパドバ大学トマス形而上学講座の教授に就任,同じ大学のスコトゥス派A.トロンベータ,およびアベロエス派ポンポナッツィと論戦を交え,後パビア大学に移る。1500年以降は修道会内部の要職を歴任,08年ドミニコ会総長,17年枢機卿になる。18年,教皇レオ10世の使節としてドイツに派遣され,トルコに対する十字軍の結成,およびルターからの恭順の取りつけに尽力したが,いずれも失敗に終わる。翌年ガエタの司教となり,ハンガリーなどの各国へ使節として派遣されたり,ヘンリー8世の離婚訴訟に関与するなど,教皇顧問として活動したが,晩年は研究と著述のうちに送った。最大の著作は《トマス・神学大全注解》であるが,《トマス・有と本質について注解》《名辞の類比》も有名で,ルネサンス期スコラ学復興の中心となり,後代のトマス派に大きな影響を与えた。
執筆者:稲垣 良典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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