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スペインのチェロ奏者、指揮者。チェロの演奏法の発展向上に決定的な役割を演じ、20世紀のチェロ界の隆盛をもたらす一方、長い間忘れられていたJ・S・バッハの『無伴奏チェロ組曲』を掘り起こして、この楽器のもっとも重要な作品として定着させ、こうした活動を通じて、チェロがバイオリンに匹敵する弦楽器であることを明らかにした現代チェロ界最大の巨匠である。
1876年12月29日、スペインのカタルーニャ地方の町ベンドレルに生まれる。バルセロナとマドリードの両音楽院で学ぶ。オーケストラの首席奏者を経て、98年からチェロ独奏者として国際的な活動を開始。1905年にピアノのコルトー、バイオリンのチボーと結成したカザルス三重奏団(カザルス・トリオ)は、33年まで公演を続け、20世紀最高のピアノ三重奏団との評価を得た。10年代に世界第一級のチェロ奏者との名声を確立すると、19年バルセロナにカザルス管弦楽団を創立、指揮にも手を染め、以後、指揮者としても国際的な活動を始める。36年のスペイン内戦ではファシズムに反対して祖国を去り、フランスの寒村プラド、ついでプエルト・リコに移り、二度と祖国の土を踏むことなく、73年10月22日、プエルト・リコのサン・フアンで96歳で永眠。プラドとプエルト・リコでは音楽祭やコンクールを主宰、人々に音楽する喜びを教え、また多くの音楽家を世に送り出すのに力を貸した。61年(昭和36)来日したが、チェロは演奏せず、指揮と公開レッスンだけを行った。音楽家としても人間としても信念を貫き通した高潔さが光輝を放っている。
[岩井宏之]
『J・M・コレドール編、佐藤良雄訳『カザルスとの対話』(1967・白水社)』
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スペインのチェロ奏者。指揮者としても活躍した。マドリード音楽院を卒業,1895年パリでデビューして演奏活動に入る。1905年ピアノのコルトー,バイオリンのティボーと結成したカザルス・トリオは,20世紀最高のピアノ三重奏団と評価された。19年バルセロナにカザルス管弦楽団を創立,指揮活動に進出。36年スペイン内乱が始まるとフランコ将軍に反対,フランスのプラド,次いでプエルト・リコに移住した。61年来日。ただしチェロは演奏せず,指揮と公開レッスンだけを行った。忘れられていたバッハの《無伴奏チェロ組曲》を復活させ,チェロ奏法を改革して20世紀のチェロ奏者たちの道を開くなど,その功績はきわめて大きい。
執筆者:岩井 宏之
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