日本大百科全書(ニッポニカ) 「セゴビア」の意味・わかりやすい解説
セゴビア(スペイン)
せごびあ
Segovia
スペイン中央部、旧カスティーリャ(1983年5月以降カスティーリャ・イ・レオン)地方セゴビア県の県都。人口5万4368(2001)。首都マドリードの北西約60キロメートル、グアダラマ山脈の北西麓(ろく)に位置する。白亜紀の石灰岩層からなる標高1000メートルの丘の上を、城壁に囲まれた旧市街が占め、その南側の低地にも市街が広がる。旧市街の北西端にアルカサルAlcázar(セゴビア城)がそびえ、市の象徴となっている。丘の北側はエレスマ川、南側はクラモレス川の谷が迫る急傾斜地で、両川は丘の北西端、アルカサルの崖(がけ)下で合流する。アルカサルは古い要塞(ようさい)を11世紀以来繰り返し増改築したもので、現在の建物は19世紀のものである。かつてのカスティーリャ王の居城で、女王イサベルも即位当時この城に住んでいた。旧市街の街路は狭く入り組んでおり、ゴシック様式の大聖堂(16世紀)やロマネスク様式のサン・エステバン教会(12世紀)などがある。北側のエレスマ川の谷沿いにもパラル修道院(15世紀)、ロマネスク様式のベラ・クルス教会(13世紀)があり、南側低地に広がる市街との間の谷にはローマの水道橋(長さ83メートル、高さ28メートル)があるなど、歴史的建造物に富む。ローマ人の築いた町で、8世紀にムーア人が占領、11世紀にアルフォンソ6世が奪回、以後カスティーリャの宮廷所在地の一つとして繁栄した。織物、電気器具、ゴム、化学などの工業が行われる。なお、旧市街とローマの水道橋は1985年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[田辺 裕・滝沢由美子]
セゴビア(Andrés Segovia)
せごびあ
Andrés Segovia
(1893―1987)
スペインのギター奏者。クラシック・ギター中興の祖であり、20世紀最高のギタリストといわれる。スペイン南東部のリナレスに生まれる。独学で演奏技法を習得し、1912年からスペイン各地に演奏旅行、19年南アメリカへ演奏旅行、24年にパリでデビューした。以来世界各地で演奏会を開き、29年(昭和4)に初来日している。スペイン内戦と第二次世界大戦で南米、ついでアメリカに移ったが、戦後はふたたび活動の本拠をヨーロッパに戻した。ギター音楽を充実させるため、現代作曲家に新作を委嘱する一方、自ら名作のギター編曲に積極的に取り組んだ功績はきわめて大きい。「セゴビア・トーン」とよばれる甘美な音色と奔放といってよいほどのテンポ・ルバートを駆使し、表情豊かなロマンチックな演奏で一世を風靡(ふうび)した。マドリードに没。
[岩井宏之]