カドワース(読み)かどわーす(英語表記)Ralph Cudworth

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カドワース」の意味・わかりやすい解説

カドワース
かどわーす
Ralph Cudworth
(1617―1688)

イギリスの哲学者、神学者。ケンブリッジ大学卒業、のち同大学クライスト・カレッジの学長となる。ケンブリッジ・プラトン学派の代表者の一人。未完の大著『宇宙の真の知的体系』(1678)において、ホッブズの唯物(ゆいぶつ)論とスピノザ的な汎神(はんしん)論を無神論として攻撃した。彼は物質と精神を区別し、精神は非物質的であり、真理は永遠なる神の精神のなかの観念であり、これを普遍的理性である人間の精神が把握しうると主張した。彼の認識論にはデカルトの影響が強いが、物心二元論ではなく、精神的形成力の存在をも認めた点で異なる。道徳説ではカルバン派の主意説を退け、永遠なる道徳法の存在を認める主知主義をとり、また人間の自由も認めた。

[小池英光 2018年1月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カドワース」の意味・わかりやすい解説

カドワース
Cudworth, Ralph

[生]1617. サマセット,アラー
[没]1688.6.26. ケンブリッジ
イギリスのケンブリッジ・プラトン学派の指導的哲学者 (→ケンブリッジ・プラトニスト ) 。ケンブリッジ大学に学び,1645年以降同大学教授。 54年にはクライスト・カレッジの校長となる。神秘的理性的なプラトン主義に立ち,ホッブズやスピノザに代表される唯物的無神論を論駁,神の永遠なる知性を擁護し,決定論に対しては人間の自由意志確証。また倫理説においては,善は理性的存在たる人間が神の意志に従うことによるものと考えた。主著『宇宙の真の知的体系』 The True Intellectual System of the Universe (1678) ,"A Treatise concerning Eternal and Immutable Morality" (1731) など。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

放射冷却

地表面や大気層が熱を放射して冷却する現象。赤外放射による冷却。大気や地球の絶対温度は約 200~300Kの範囲内にあり,波長 3~100μm,最大強度の波長 10μmの放射線を出して冷却する。赤外放射...

放射冷却の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android