改訂新版 世界大百科事典 「かに(蟹)星雲」の意味・わかりやすい解説
かに(蟹)星雲 (かにせいうん)
Crab Nebula
おうし座の牡牛の角の先にある星雲で,超新星の残骸である。1764年にメシエが作った拡散状天体のカタログで1番(M1)の番号が与えられ,NGCでは1952。1054年に金星より明るく輝いたことが,中国や日本の記録に見られる。7000光年のかなたにあって,毎秒1000km以上の高速でガスが四方八方に飛び散っている。そのため,1921年にウィルソン山の1.5m望遠鏡を使って撮った写真と12年前のものとを比べると,角度の1秒あまり膨張しているのが発見された。太陽質量の数倍もある星が,その一生の最後に大爆発を起こしたもので,かに星雲の中央部には爆発の残りの部分が中性子星として見られる。この星の電波強度が,0.033秒の周期で変化していることが68年に発見された。これがパルサーと呼ばれる天体である。可視光でも,0.033秒の周期で0.004秒間だけ明るくなっており,これは中心部に残った中性子星が高速で回転しており,その表面の輝いている部分が周期的に見えているためである。
執筆者:磯部 琇三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報