改訂新版 世界大百科事典 「カニクサ」の意味・わかりやすい解説
カニクサ
climbing fern
Lygodium japonicum(Thunb.)Sw.
ツルシノブともいう。暖地に普通のつる性の夏緑性草本で,フサシダ科に属するが,カニクサ科を独立させる考えもある。根茎は地中を短くはい,毛があって鱗片はない。葉は複葉となるが,掌状または羽状の対になる小羽片を出しながら,先端は生長を止めることなく伸びるので,日本の暖地では高さ2mを超えることが珍しくない。胞子囊は小羽片の小葉の縁にできる小さい裂片に2列に並ぶ。脈上に1個ずつつき,大型で,胞子囊群というべきまとまりはもたず,1個ずつ包膜におおわれる。本州の暖地,四国,九州の山野に普通にみられ,朝鮮南部,中国,インドシナ,タイなどに分布する。さらに南で報告されているものが日本のカニクサと同じかどうか,まだ研究の必要があるし,アメリカでも栽培から逸出したものが野生化しているところがあるという。琉球や小笠原にある近縁のフサシダSchizaea digitata(L.)Sw.やカンザシワラビS.dichotoma(L.)Sm.は胞子囊の構造などはカニクサと同じだが,栄養器官の形質には似たところがない。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報