日本大百科全書(ニッポニカ) 「カノープス」の意味・わかりやすい解説
カノープス
かのーぷす
Canopus
りゅうこつ座のα(アルファ)星の固有名。トロイ戦争でギリシア艦隊の水先案内の長として活躍した人物「Kanobos」のラテン名に由来する。実視等級マイナス0.73等で、シリウスに次いで全天で2番目に明るい星である。天球上の位置は、2000年分点で赤経6時24分、赤緯マイナス52度42分。距離は310光年。スペクトル型F0の超巨星で、表面温度は約7300K、半径は太陽の約50倍、質量は太陽の8倍程度と推定されている。毎秒21キロメートルの速度で太陽系から遠ざかりつつある。この星が地平線から昇って見える場所の北限は、その土地の高度によって少し異なるが、北緯38度付近である。日本では、北海道と東北地方北部からは見ることができない。見ることができる地方でも南中高度が低いので、もともと白色のこの星は、地平線方向の厚い地球大気層による青色光の吸収のために赤色に見える。中国では、洛陽(らくよう)や長安から南の果てに低く見えていたので、古くから「南極老人」「老人星」「寿星」などとよんで、めでたい星として敬っていた。これらの漢名は日本にも古くから伝わり、平安時代には朝廷で毎年「老人星祭」を行っていたという。七福神の「寿老人」は南極老人に由来している。
[岡崎 彰]