改訂新版 世界大百科事典 「カマハシ」の意味・わかりやすい解説
カマハシ (鎌嘴)
wood-hoopoe
ブッポウソウ目カマハシ科Phoeniculidaeの鳥の総称。この科の鳥はヤツガシラ科と近縁で,モリヤツガシラ属Phoeniculus 6種とカマハシ属Phinopomastus 2種からなり,サハラ砂漠以南のアフリカ大陸に分布する。全長約20~45cm。どの種も体はほっそりしていて,尾が長い。くちばしは細長く,1種を除き,鎌型あるいは三日月刀型に湾曲している。カオジロモリヤツガシラPhoeniculus bolleiは,くちばしは赤く,頭部は白く,他の部分は光沢のある濃緑色ないし濃紫色。オナガクロモリヤツガシラP.castaneicepsは,くちばしは灰黒色であまり湾曲せず,頭部は褐色,他の部分は光沢のある濃緑青色ないし濃紫色。どの種も背,翼,尾などは光沢のある濃青色,緑色,紫色で美しい。雌雄は同色だが,種によっては雌は褐色に富む。疎林,林縁,深い森林などに生息し,一部の種は小さな群れになって生活する。どの種も大きな声でにぎやかに鳴き叫ぶ性質がある。脚のつめは鋭く,太枝上や幹上をキツツキ類のように自由に動き回り,主として昆虫類やクモをとって食べる。しかし,地上で採食する種もある。自然の樹洞,あるいはキツツキやゴシキドリ類の使った古い樹洞の巣穴などの中に1腹3~5個の卵を産む。カオジロモリヤツガシラほか数種は,尾腺から強いジャコウ臭のする物質を分泌する。このにおいは,おそらく巣に近寄る捕食動物を遠ざけるのに役だっていると考えられているが,その効用は十分明らかにされていない。
執筆者:安部 直哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報