カミクラゲ
かみくらげ / 髪水母
[学] Spirocodon saltatrix
腔腸(こうちょう)動物門ヒドロ虫綱花クラゲ目キタカミクラゲ科に属する海産動物。ヒドロクラゲとしてはかなり大形で、傘の高さ10センチメートル、直径6センチメートルほどに達する。傘はほぼ釣鐘状、4本の放射管からは左右に多数の樹枝状の盲管を出している。内傘中央の口柄はほぼ円筒状で、その下端に口唇の発達した口がある。放射管と口柄との中間に螺旋(らせん)状に伸びた生殖腺(せん)が発達する。若い個体では傘縁の八つの部分から触手が出ているが、老熟したものでは傘の全縁から多数の触手が垂れ下がり、ちょうど人の頭髪のようにみえるのでこの名がある。各触手の基部には顕著な眼点がある。全体は薄い緑色、口柄、生殖腺、放射管などは青色、内部の盲管は褐色、眼点は紅色で、きわめて美しい。日本特産種で、青森県から九州までの太平洋岸の内湾や入り江などに、おもに冬から春にかけてみられる。本種のポリプ時代はまだ知られていない。本種によく似たキタカミクラゲPolyorchis karafutoensisは、その名のとおり北方産で、日本では北海道沿岸にみられ、カミクラゲよりは小形で触手の数も少ない。
[山田真弓]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
カミクラゲ
Spirocodon saltator
ヒドロ虫綱キタカミクラゲ科に属する腔腸動物(刺胞動物)。長い触手が傘の縁から頭髪のようにたくさん垂れ下がっているのでこの名がある。日本特産種で,本州から九州沿岸の内湾に冬から春にかけて発生する。傘は釣鐘状で高さ10cm,幅6cm内外,4本の青い放射管から左右に,また環状管からも多くの褐色の樹枝状に分かれた盲管をだしている。生殖腺は雌は褐色,雄は青緑色で,放射管と口柄との中間の放射管上にあり,らせん状になって垂れ下がっている。傘の縁は8等分していて,クラゲが幼体の場合は触手が8群になっているが,触手はしだいに増加して,ついには傘の縁全体から生ずるようになる。水面まで上昇すると,触手を周囲に広げて静かに降り,その間にプランクトンなどの餌をとらえる。着生性のポリプはまだ発見されていない。このクラゲを飼育して見せている水族館もある。
執筆者:今島 実
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カミクラゲ
Spirocodon saltatrix
刺胞動物門ヒドロ虫綱花クラゲ目カミクラゲ科。傘は高さ 10cm,幅 6cm内外の釣鐘状で,4本の青い放射管は多数の樹枝状細管に分かれている。傘の縁は 8等分されているが,細長い触手が数多く垂れ下がっている。ゆっくりと泳ぐときに触手が髪の毛をなびかせるような印象を与えることからこの名がある。日本固有種で,青森県から九州まで,太平洋岸の内湾に冬から春にかけて見られる。(→クラゲ,刺胞動物,ヒドロ虫類,無脊椎動物)
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カミクラゲ
キタカミクラゲ科の腔腸(こうちょう)動物。かさは釣鐘状で高さ10cm,直径6cmくらい。淡緑色で透明。かさの全縁から触手がたれ下がり,頭髪のようなのでこの名がある。クラゲ類中,体制が最も発達している。日本特産で,本州〜九州沿岸の内湾に冬〜春にかけて発生する。
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世界大百科事典(旧版)内のカミクラゲの言及
【クラゲ(水母)】より
…口柄の基部にある胃腔から4本の放射水管がでて傘の周辺を取り巻く環状管に連絡している。[カミクラゲ](イラスト)では口柄から多くの盲管を出している。傘の縁の内側には縁膜が棚板のように取り巻いていて,これがヒドロクラゲの大きな特徴になっている。…
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