カルク・アルカリ岩(読み)かるくあるかりがん(英語表記)calk-alkali rock

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルク・アルカリ岩」の意味・わかりやすい解説

カルク・アルカリ岩
かるくあるかりがん
calk-alkali rock

比較的カルシウムに富み、アルカリに乏しいカルクアルカリ岩系に属する火成岩。環太平洋地域のような造山帯に特有のもので、海洋性地殻の地域には産しないとされる。日本で普通にみられる玄武岩安山岩石英安山岩流紋岩、斑糲(はんれい)岩、閃緑(せんりょく)岩、花崗(かこう)閃緑岩、花崗岩のうちのかなりのものはカルク・アルカリ岩である。火山岩では石基中の紫蘇(しそ)輝石の存在が特徴的であり、斑晶鉱物として角閃石、黒雲母(くろうんも)を含むことがあり、紫蘇輝石質岩系に相当する岩石である。ケイ酸を多く含み、いわゆる酸性岩類を多量に伴っているのが特徴で、金属鉱床の多くは、カルク・アルカリ岩系の火成活動に関連して形成される。20世紀初頭まではアルカリに乏しい火成岩の総称であったが、その後アルカリに乏しい岩系はソレイアイト質岩系と狭義のカルク・アルカリ岩系に二分された。前者に比べ後者はやや低い温度、高い水蒸気圧下、高い酸素分圧下で形成されたと考えられる。カルク・アルカリ岩の成因としては、これが地殻の厚い所に産出することから、マントル起源のマグマが地殻物質を融解して生じたとする混成作用説が有力であったが、のちに、独立のカルク・アルカリ岩系の本源マグマの存在が提唱されるようになった。最近では、いくつかのまったく違った成因で同一のカルク・アルカリ岩が形成されるとする議論がかなりの支持を得ている。

[矢島敏彦]

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岩石学辞典 「カルク・アルカリ岩」の解説

カルクアルカリ岩

イディングスは1892年に火成岩をアルカリ(alkali)グループとサブアルカリ(subalkali)グループに区分することを提案し,後者はその後のカルク・アルカリ(calc-alkali)グループとして知られるグループになった[Iddings : 1892].これは後にピーコックがアルカリ石灰指数(alkali-lime index)によって分類し,火成岩の化学的な四つのクラスの一つとなった[Peacock : 1931].カルク・アルカリ岩の語は現在の一般的な感覚ではアルカリ(alkaline)でない岩石の記述に用いられているが,これらの岩石はアルカリ石灰指数が56と61の間の岩石の記載に制限されるべきである.このグループの岩石の主成分は長石,角閃石またはオージャイトである.准長石,Na角閃石,Na輝石などのアルカリ鉱物は欠如している.このグループには花崗閃緑岩,閃長岩,閃緑岩,斑糲岩とそれらに対応する噴出岩が含まれる.スピライトや大部分の橄欖岩はアルカリ岩に含まれない.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルク・アルカリ岩」の意味・わかりやすい解説

カルク・アルカリ岩
カルク・アルカリがん
calc-alkali rock

玄武岩-安山岩-石英安山岩-流紋岩の岩系に属する火山岩の総称。 19世紀末から採用されてきた火成岩区分の一つ。化学組成上,アルカリ岩に比較して,二酸化ケイ素や酸化アルミニウムに対して酸化ナトリウム+酸化カリウムの割合が少い岩石。鉱物成分上,酸性岩の一部を除き,石基に斜方輝石を含み,環太平洋火山地域に特徴的に産する。従来のカルク・アルカリ岩にはソレアイト質岩系に属するものもある。現在では紫蘇輝石質岩系の岩石にほぼ限定して使われる。

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百科事典マイペディア 「カルク・アルカリ岩」の意味・わかりやすい解説

カルクアルカリ岩【カルクアルカリがん】

石灰アルカリ岩とも。石灰CaOを多く含みアルカリに乏しくケイ酸SiO2に富む火成岩。アルカリの多い有色鉱物や準長石を含まない。玄武岩,安山岩,流紋岩およびその深成岩相をカルクアルカリ岩系という。アルカリ岩に比しはるかに普通で多量に産する。
→関連項目アルカリ岩ソレイアイト

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化学辞典 第2版 「カルク・アルカリ岩」の解説

カルク-アルカリ岩
カルクアルカリガン
calc-alkali rock

火成岩を全地球的にみると,大西洋地域のようにアルカリを多く含むアルカリ岩と,アルカリが少なくカルシウムの多い太平洋地域の岩石に大別される.この太平洋型岩石をカルク-アルカリ岩と総称する.

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