日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルク・アルカリ岩」の意味・わかりやすい解説
カルク・アルカリ岩
かるくあるかりがん
calk-alkali rock
比較的カルシウムに富み、アルカリに乏しいカルク・アルカリ岩系に属する火成岩。環太平洋地域のような造山帯に特有のもので、海洋性地殻の地域には産しないとされる。日本で普通にみられる玄武岩、安山岩、石英安山岩、流紋岩、斑糲(はんれい)岩、閃緑(せんりょく)岩、花崗(かこう)閃緑岩、花崗岩のうちのかなりのものはカルク・アルカリ岩である。火山岩では石基中の紫蘇(しそ)輝石の存在が特徴的であり、斑晶鉱物として角閃石、黒雲母(くろうんも)を含むことがあり、紫蘇輝石質岩系に相当する岩石である。ケイ酸を多く含み、いわゆる酸性岩類を多量に伴っているのが特徴で、金属鉱床の多くは、カルク・アルカリ岩系の火成活動に関連して形成される。20世紀初頭まではアルカリに乏しい火成岩の総称であったが、その後アルカリに乏しい岩系はソレイアイト質岩系と狭義のカルク・アルカリ岩系に二分された。前者に比べ後者はやや低い温度、高い水蒸気圧下、高い酸素分圧下で形成されたと考えられる。カルク・アルカリ岩の成因としては、これが地殻の厚い所に産出することから、マントル起源のマグマが地殻物質を融解して生じたとする混成作用説が有力であったが、のちに、独立のカルク・アルカリ岩系の本源マグマの存在が提唱されるようになった。最近では、いくつかのまったく違った成因で同一のカルク・アルカリ岩が形成されるとする議論がかなりの支持を得ている。
[矢島敏彦]