他の成分に比べてアルカリ含有量が多い火成岩。通常、石英などのケイ酸鉱物を含まず、特徴的な鉱物としてソーダ輝石、ソーダ角閃(かくせん)石、チタン輝石を含んだりする。火成岩類のアルカリの量はケイ酸SiO2の量と関連して変化しているので、ケイ酸の量を基準としてアルカリNa2O+K2Oの含有量を比較する。アルカリ岩はケイ酸の過不足の程度によって、(1)准長石を含まない系列(アルカリ玄武岩、粗面玄武岩、粗面安山岩、粗面岩、アルカリ流紋岩、アルカリ斑糲(はんれい)岩、モンゾナイト、閃長岩)、(2)長石と准長石を含む系列(ベイサナイト、テフライト、フォノライト、エセックサイト、准長石閃長岩)、(3)准長石を含み長石を含まない系列(霞(かすみ)岩、白榴(はくりゅう)岩、黄長岩、ジャクピランジャイト、メルティジャイト、アイヨライト、ウルタイト)に分けられる。アルカリ岩の構成鉱物は、(1)の系列では、斜長石、カリ長石、アノーソクレース、方沸石(ほうふっせき)、少量のケイ酸鉱物、橄欖(かんらん)石、単斜輝石、アルカリ角閃石、黒雲母(うんも)、鉄鉱石など。(2)の系列では、斜長石、霞石、リューサイト、方沸石、ノゼライト、アウインなどで、苦鉄(くてつ)質鉱物は(1)とほぼ同じである。(3)の系列では、長石は含まれず、霞石、リューサイト、方沸石、ノゼライト、アウイン、ソーダライト、カルシライト、それに(1)とほぼ同じ苦鉄質鉱物と金雲母などである。
アルカリ岩を形成したマグマは、ソレイアイト質マグマに比較して、マントルのより深い位置で発生するという考え方が有力である。この考え方によれば、太平洋側から日本海側に向かって深度を増す等深発地震面に沿ってマグマが発生し、日本海側、大陸側では深い位置でマグマが発生するため、アルカリに富むものになるとする。このほか、ソレイアイト質マグマからも分化作用、混成作用などの過程によってアルカリ質マグマが形成されるとする考え方もある。東アフリカ地溝帯ではカーボナタイトとよばれる炭酸塩を主体とする噴出物がアルカリ火山活動に伴っている。南アフリカやオーストラリアの、ダイヤモンドを産出するキンバーライトはアルカリ火山岩の一種である。アルカリ岩は地中海周辺にも多い。アジアでは朝鮮から中国にかけての白頭山、蓋馬(かいま)高原、それに鬱陵(うつりょう)島、済州島などでみられる。日本では島根県浜田、秋田県男鹿(おが)、山形県鶴岡(つるおか)市温海(あつみ)、島根県隠岐(おき)、長崎県の壱岐(いき)と五島列島、長野県木曽(きそ)の御嶽(おんたけ)山などがある。主として日本海側に分布し、環日本海アルカリ岩石区をつくっている。
[矢島敏彦]
地球上の火成岩をその成因にかかわりなく鉱物や化学組成上の特徴にもとづいて,アルカリ岩と非アルカリ岩に分類することが19世紀後半から行われた。ただし分類の定義はあいまいで人により異なる。イディングズJ.P.IddingsはSiO2やAl2O3に対し,比較的Na2O+K2Oが多い岩石をアルカリ岩とした(1892)。シャンドS.J.Shandは準長石鉱物を含む岩石をアルカリ岩とした(1922)。ケネディW.Q.Kennedyはノルムにカンラン石と少量のネフェリンを含む玄武岩質マグマ(カンラン石玄武岩マグマ型)が分化してアルカリ岩を生じ,ソレアイトからは非アルカリ岩を生じると考えた(1933)。現在ではアルカリ岩系の岩石をアルカリ岩と呼ぶことがある。
執筆者:宇井 忠英
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SiO2やAl2O3に対してNa2O + K2Oの多い火成岩の一般名称.アルカリが多いと,構成鉱物として石英が生じることが少なく,アルカリ長石が多くなる.典型的鉱物として,かすみ石や白りゅう石が存在する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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