カルシウム剤(読み)かるしうむざい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルシウム剤」の意味・わかりやすい解説

カルシウム剤
かるしうむざい

栄養剤一種であるが、治療薬としても使われる。カルシウムは人体内にもっとも多く存在する無機質で、体重の1.5~2.2%を占める。その90%以上は骨など硬組織にリン酸塩などとして沈着している。体液中にはわずかに存在し、血液中のカルシウムイオンは上皮小体ホルモンとカルシトニン甲状腺(こうじょうせん)のC細胞から分泌されるホルモン)によって調節されている。カルシウムはまたトロンボプラスチン血液凝固因子の一つ)の作用を活性化して血液の凝固に関係する。カルシウムイオンが欠乏すると血管から組織液が滲出(しんしゅつ)する。したがって、じんま疹(しん)や、凍傷の場合にカルシウムを補給すると消炎効果がみられる。このようにカルシウム欠乏症、各種出血性疾患、骨軟化症、慢性炎症性疾患、皮膚疾患などの治療のために使用されるのがカルシウム剤である。注射剤としては塩化カルシウム注射液、グルコン酸カルシウム注射液、内服用にはリン酸水素カルシウム沈降炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウムがある。

[幸保文治]

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