ジギタリス製剤（読み）ジギタリスセイザイ

病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版

ジギタリス製剤

製品名
《ジゴキシン製剤》
ジゴキシン（アルフレッサファーマ）
ジゴキシンKY（アステラス製薬、京都薬品工業、トーアエイヨー）
ジゴキシンKYO（アステラス製薬、京都薬品工業、トーアエイヨー）
ジゴシン（太陽ファルマ）
ハーフジゴキシンKY（アステラス製薬、京都薬品工業、トーアエイヨー）
《メチルジゴキシン製剤》
メチルジゴキシン（武田テバファーマ、武田薬品工業）
ラニラピッド（中外製薬）

　心臓の筋肉に直接作用して、その収縮力を増大させ、また心臓の拍動速度やリズムを調節することにより、弱った心臓のはたらきを回復させる薬です。

　古くからむくみをとる薬として、1930年代からは心不全治療剤として使われてきました。効果が高いため、現在でも生命にかかわる心臓病の治療や予防の主役となる薬です。

　心筋梗塞しんきんこうそく、狭心症、高血圧症、先天性心疾患・弁膜疾患などによるうっ血性心不全、肺水腫はいすいしゅ、心臓喘息ぜんそく、心房細動・粗動による頻脈、発作性上室性頻拍、肺性心（肺血栓けっせん・塞栓症そくせんしょう、肺気腫はいきしゅ、肺線維症などによる）、そのほかの心臓病、甲状腺機能亢進症こうじょうせんきのうこうしんしょう・低下症に基づくうっ血性心不全、腎臓病じんぞうびょう、手術・急性熱性疾患・出産・ショック・急性中毒などによる心不全や頻脈の予防と治療に用いられます。

①ジギタリス中毒をおこすことがあります。ジギタリス中毒の症状は、循環器症状（不整脈、徐脈、頻脈、動悸どうきなど）、胃腸症状（食欲不振、吐き気・嘔吐おうと、下痢、腹部膨満感、下腹部不快感、腹痛など）、視覚障害（光がないのにちらちら見える、ものが黄色または緑色に見える、目がかすむ、まぶしい）、精神神経症状（めまい、頭痛、ものごとを認識できない、錯乱など）、血小板減少などです。

　中毒と思われるような症状が現れたときは服用を中止し、医師に報告してください。

　副作用の予防として、血液中のジギタリス製剤の残量を定期的に測って服用量を調節する、腎臓じんぞうから排泄はいせつされる速度が速く、体内に蓄積しにくい薬を選ぶといった対策がとられていますが、絶対に中毒がおこらないとはいえません。服用する本人も家族も、中毒の症状によく注意していてください。

②過敏症状（発疹ほっしん、じんましん、紫斑しはん、むくみなど）、ジギタリス中毒（高度の徐脈、二段脈、心室性期外収縮、発作性心房性頻拍）、非閉塞性腸間膜虚血が現れることがあります。このような症状が現れたときは服用を止め、すぐ医師に報告してください。

③そのほかに、男性では女性化乳房などがおこることがあります。このような症状がおこったら、医師に報告してください。

①錠剤、散剤があります。ジギタリス製剤は、使用量が少ないと効かず、ちょっと使用量が多いと中毒をおこします。有効量と中毒量の幅が狭い、使用法のむずかしい薬です。

　そのため、医師から指示された、1回の服用量、1日の服用回数などは必ず守ってください。

②服用し忘れたときは、その分は抜いて、次回から正しく服用してください。忘れたからといって、2回分の量をいちどに服用することは絶対止めてください。

③問診の際にあらかじめ、持病・アレルギーなどの体質・現在使用中の薬の有無を医師に報告するとともに、使用前に薬の効果と副作用について医師・薬剤師からよく説明を聞き、注意事項をきちんと守ってください。

　以前にこの薬を使用して過敏症をおこしたことのある人、ジギタリス中毒をおこしたことがある人、房室ブロック、洞房ブロック、特発性肥大性大動脈弁下狭窄きょうさくなどの閉塞性心筋疾患のある人は使用できません。

　また、急性心筋梗塞、心室性期外収縮、心膜炎、肺性心、WPW症候群、電解質異常（低カリウム血症、高カルシウム血症、低マグネシウム血症など）、腎臓病、血液透析を受けている人、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症がある人は必ず医師に報告してください。この薬を服用する場合は、医師の指示を正しく守ってください。

④下痢や嘔吐おうとのある人がジギタリス製剤を服用すると、低カリウム血症（食欲不振、体の衰弱、不整脈などがおもな症状）がおこりやすくなります。下痢や嘔吐があったら、必ず医師に報告してください。

⑤妊婦・妊娠している可能性のある人、母乳で授乳中の人は医師に報告してください。

⑥高齢者や子どもが服用すると、副作用が現れやすい薬です。家族は薬の注意や特徴を医師からよく聞き、患者に指示通り正しく服用させてください。とくに高齢者の場合、頭重感や倦怠感けんたいかんといった神経系の症状が、高齢だからとみすごされやすいので注意が必要です。

⑦過去2～3週間以内にこの薬やほかの強心剤を用いた人は、医師に報告してください。

⑧ジギタリス中毒を防ぐために血液中の薬の濃度の測定や心電図検査などが指示されることがあります。必ず受けてください。

⑨別の医師の診察を受けるときや、大衆薬を服用するときには、医師・薬剤師にこの薬を使っていることを必ず報告してください。

⑩ジギタリス製剤を服用していることを示すカードを常に持ち歩くようにすると、万一のときに役立ちます。

⑪この薬を服用中にほかの薬を使う必要がある場合は、必ず医師に報告してください。

　・併用するとジギタリス中毒をおこしやすい薬：チアジド系降圧利尿剤・フロセミド製剤などのカリウム排泄はいせつ型利尿剤、カルシウム剤、レセルピン製剤、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤、アトロピン硫酸塩水和物製剤、βブロッカー製剤、気管支拡張剤、抗甲状腺剤、キニジン硫酸塩水和物製剤と併用するとジギタリス中毒がおこりやすくなります。血管拡張剤〔カルシウム拮抗剤〕と併用すると、不整脈を悪化させることがあります。医師に薬の服用量を加減してもらってください。

　ベラパミル塩酸塩製剤・ニフェジピン製剤と併用すると、ジギタリス製剤の血液中の濃度が上昇することがあるといわれています。また、降圧利尿剤と併用するときは栄養のバランスに注意し、とくにカリウムの豊富な果物（バナナ、メロン、トマトなど）をとるようにします。

出典　病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版