カードを用いた図書・情報などの整理システム。ノートとちがって,一定主題による組替え,追加が自由という利点があり,文献検索技術として発達してきた。外国では1820年,ロンドン電信技術図書館で最初のカード目録が作られ,くだって1898年アメリカ議会図書館では3インチ×5インチ(7.5cm×12.5cm)のカードを標準目録カードに決定した。日本にもカード方式は1890年(明治23)ごろに紹介されている。その後,内外ともにカードによる整理や学習方式は徐々に発達してきたが,日本では1950年代に京都大学の人文科学研究所における共同研究に,B6判の統一規格のカードが用いられて,その成果が梅棹忠夫により一般に紹介されていらい急速に普及した。このカード・システムは蓄積や分類整理が目的でなく,むしろ不断の組替え操作により,新しい発想をひき出すという考え方であったが,一般社会では情報整理や備忘のために使われることが多い。検索型カード・システムの最も進んだものとして,二つ以上の主題から検索(多角検索)のできるパンチ・カードが早くから科学者などによって開発,利用されてきた。これはコンピューター用のパンチ・カードと違い,カードの四周に1~2列の孔が並んでおり,一定の規則にしたがってパンチを入れる(切りこみを入れる)と,該当の孔にソーター(選別用の細棒)を挿したとき,切りこみがはいったカードはソーターに引っかからずに下に落ち,ただちにふるい分けられるという原理になっている。科学文献など標準化しやすいものの多角的な検索に向いているほか,一般事務の面でもカード式簿記システム,人事などの諸管理方式,図面やフィルムなどの保存などにも応用されるようになり,形式も孔が10列以上の多孔式パンチ・カードを生み出すにいたった。カード・システムによる情報管理は発想の面でコンピューターと競合する部分もあるが,発想の資料や索引システムとして便利なだけでなくコストが安いため,今後も利用されよう。
執筆者:紀田 順一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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