日本大百科全書(ニッポニカ) 「パンチ」の意味・わかりやすい解説
パンチ(漫画週刊誌)
ぱんち
Punch
イギリスで発行された世界でもっとも古い風刺漫画週刊誌。1841年創刊。政治、社会、国際情勢とくにアメリカそのものを、一流の漫画家や作家を起用して、約160年間にわたって辛辣(しんらつ)に風刺し、揶揄(やゆ)してきた。漫画家や作家にとって、同誌に起用されることは、一流の作家として認められたことを意味した。とくに毎週水曜日に開かれた編集企画会議に出席し、『パンチ』の象徴となっているテーブル(マホガニー・ツリーとよばれた)に自分のイニシアルを自分で彫るという栄に浴したいと、だれもが願ったのである。W・サッカレー、A・A・ミルン、J・サーバーといった作家たちや、J・リーチ、チャールズ・キーン卿(きょう)といった漫画家たちは、その数少ないなかの一人であった。2002年廃刊となった。『パンチ』は日本にもすでに明治初期に紹介され、模倣され、漫画のことをポンチ絵とよんだ。
[青木日出夫]
『谷田博幸著『ヴィクトリア朝挿絵画家列伝――ディケンズと「パンチ」誌の周辺』(1993・図書出版社)』▽『リチャード・ドイル著、富山太佳夫編訳『挿絵の中のイギリス』(1993・弘文堂)』▽『三宅興子著『もうひとつのイギリス児童文学史――「パンチ」誌とかかわった作家・画家を中心に』(2004・翰林書房)』▽『松村昌家編『「パンチ」素描集――19世紀のロンドン』(岩波文庫)』