翻訳|punch
イギリスで発行された世界でもっとも古い風刺漫画週刊誌。1841年創刊。政治、社会、国際情勢とくにアメリカそのものを、一流の漫画家や作家を起用して、約160年間にわたって辛辣(しんらつ)に風刺し、揶揄(やゆ)してきた。漫画家や作家にとって、同誌に起用されることは、一流の作家として認められたことを意味した。とくに毎週水曜日に開かれた編集企画会議に出席し、『パンチ』の象徴となっているテーブル(マホガニー・ツリーとよばれた)に自分のイニシアルを自分で彫るという栄に浴したいと、だれもが願ったのである。W・サッカレー、A・A・ミルン、J・サーバーといった作家たちや、J・リーチ、チャールズ・キーン卿(きょう)といった漫画家たちは、その数少ないなかの一人であった。2002年廃刊となった。『パンチ』は日本にもすでに明治初期に紹介され、模倣され、漫画のことをポンチ絵とよんだ。
[青木日出夫]
『谷田博幸著『ヴィクトリア朝挿絵画家列伝――ディケンズと「パンチ」誌の周辺』(1993・図書出版社)』▽『リチャード・ドイル著、富山太佳夫編訳『挿絵の中のイギリス』(1993・弘文堂)』▽『三宅興子著『もうひとつのイギリス児童文学史――「パンチ」誌とかかわった作家・画家を中心に』(2004・翰林書房)』▽『松村昌家編『「パンチ」素描集――19世紀のロンドン』(岩波文庫)』
パーティのときなどに,パンチボールとよぶ大きな器で大量につくり,グラスに注ぎわけて飲む混合飲料。インドに始まったといわれ,酒,水,砂糖,果物,香料の5品の材料を用いたので,5種を意味するサンスクリットのパンチャ,ヒンドゥー語のポンシュ,ペルシア語のパンジなどが語源とされ,スペイン人やイギリス人によってヨーロッパに伝わった。今ではこれにはあまりこだわらず,さまざまな作り方をしている。ワイン,ブランデー,ウィスキー,ラムなどに果汁,リキュール類,シロップを加えて味をととのえ,フレーバーと彩りを添えるために,オレンジ,レモン,リンゴ,モモそのほか季節の果物をスライスして浮かせる。よく冷やしておき,パーティの始まるときに大きな氷塊を中に入れ,よく冷えたシャンパンや炭酸水でうすめて飲みやすくする。ボールは目だつところにおき,花でまわりを飾り,パーティを盛り上げる彩りとする。またプロヒビション・パンチprohibition-punchといって,アルコール分をまったく含まないものもある。濃い紅茶,各種果汁,シロップ,果物をつかい,アルコールを飲めない人向きにつくる。フルーツ・パンチ(フルーツ・ポンチとも)は各種フルーツをきざんでグラスに盛り,シロップなどを注ぐ。
執筆者:伊藤 多喜男
1841年ロンドンで創刊以来長い伝統を誇るイギリスの絵入り週刊風刺雑誌。《パンチ》とは,かつて街頭の舞台で演じられたパンチとジュディの人形劇からとり,副題の《ロンドン・シャリバリ》は,発案者のランデルズEbenezer Landellsが,パリで発行されていた雑誌《パリ・シャリバリ》からヒントを得てつけられた。風俗,世相,政治その他を上品に風刺する文章に1こま漫画がふんだんに挿入された。《パンチ》には,常にその時代最高の文学者と画家が参加していた。例えばH.メーヒューやサッカレー(画家としても腕をふるった)が文章で,ジョン・テニエル,リチャード・ドイル(コナン・ドイルの伯父)が絵画でその紙面を飾っていた。まさにイギリスのユーモアの典型と目されている。なお,日本で風刺漫画を意味する〈ポンチ絵〉の名称はこの雑誌に由来する。
執筆者:小池 滋
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…その代表的なものは現代まで生命を保っている。イギリスのパンチPunch,フランスのポリシネルPolichinelle,ドイツのカスペルKasperl,イタリアのプルチネラPulcinellaなどは幼児から老人までに愛される道化人形である。カスペルは王様とも対話するし,客席の見物衆とも対話する。…
…工具鋼でつくった棒状または板状の,押込みまたは切断用工具。塑性加工では,深絞りの雄型,穴あけ用の雄型,押込み変形における押込工具,また穴あけ鍛造用の雄型などをいう。罫書(けがき)工具のうちで,工作上の目印を打ったり,ドリルの中心をもみこむための点を打つのに用いる工具もポンチという。工具鋼製の丸棒または多角形の棒の一端を鋭くとがらせたもので,目打ち(プリックポンチ)は先端角度が60度で,位置決めの点を打つのに,また心立てポンチ(センターポンチ)は先端角度が90度で,目打ちで打った穴を広げるのに用いる。…
…イギリスのジャーナリスト。1841年雑誌《パンチ》の初代編集長となり,そのほかにも多くの新聞・雑誌の編集長となった。彼の著作の中で最も重要なものは《ロンドンの労働と貧民》4巻(1851‐64)で,ロンドン貧民街の住民の言葉をそのまま筆記し,多くの統計的資料とともにまとめたルポルタージュである。…
※「パンチ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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