日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガス吸収」の意味・わかりやすい解説
ガス吸収
がすきゅうしゅう
gas absorption
気体混合物を適当な液体と直接接触させて、気体中のある特定成分だけを溶解吸収させて分離する操作。混合気体の分離、有用成分の回収、気液反応による製品の製造、不要成分または有害成分の除去に用いられ、最後の操作をガス洗浄あるいはスクラビングということもある。吸収とは逆に、液体中に溶解している成分を追い出す操作を放散またはストリッピングという。
ガス吸収では吸収液の選択が重要であるが、目的とする気体成分を選択的に吸収し、溶解度が大きく、吸収した気体を容易に放散できて、吸収液が繰り返し使用できるものが選ばれる。気液反応による製品を目的とする場合以外では、水または水溶液を用いることが多い。気体混合物の分離には、ガス吸収以外にも、固体の吸着剤を用いる吸着、加圧液化―蒸留、膜分離などの方法もあるが、液体溶媒の選択により、変化に富んだ分離がガス吸収で行われる。
ガス吸収には、酸素・炭酸ガスなどを水に溶解させる場合のような物理吸収と、炭酸ガスを炭酸カリウムまたは炭酸ソーダ水溶液に溶解・反応させる化学吸収に分けられる。後者は吸収後の液を加熱することで容易に炭酸ガスを放散させ、吸収液を再生使用できるが、可逆反応であるから、平衡に近づけば吸収速度は遅くなる。吸収装置としては、液を分散相にする充填(じゅうてん)塔、スプレー塔、ガススクラバー、濡(ぬ)れ壁塔などと、ガスを分散相とする段塔、気泡塔、気泡攪拌槽(かくはんそう)などが代表的なものである。
[早川豊彦]